「ジャンボの秘蔵っ子」の初優勝は、またもお預けとなった。3人が並んだ首位から出た佐久間朱莉(21=大東建託)は、ロケットスタートを切り、第1ラウンドから首位を守る完全優勝目前の17番で逆転された。

1イーグル、4バーディー、ボギーなしの66と6つ伸ばして回り、通算14アンダー、202。それでも同じく首位から出て、終盤14番から4連続バーディーを奪った、同じ21年6月プロテスト合格の阿部未悠に、初優勝で先を越された。師匠は「ジャンボ」こと男子ツアーのレジェンド、尾崎将司。今季開幕前には、尾崎の弟の建夫、直道の「尾崎3兄弟」が勢ぞろいした場面で「今年は勝ちにこだわれ」と、ハッパをかけられていたが、通算14度目のトップ10入りでも、初優勝には届かなかった。

出だしの1番パー5で最高のスタートを切った。残り209ヤードから2オンに成功すると、15メートルも残った難しい下りのパットを決めてイーグルを奪い、右手でガッツポーズをつくった。さらに2番パー3でも、再び難しい下り6メートルのパットを決めてバーディー。頭一つ抜け出した。さらに8番パー4でも、難しい2段グリーンの下の段から8メートルを沈めて3つ目のバーディーを奪って折り返した。

後半も13番パー3で7メートル、14番パー4で4メートルのパットを決めて、立て続けに伸ばした。この時点で2位に2打差をつけ、初優勝は手の届くところまできていた。だがその後、食い下がる阿部に16番で追いつかれ、17番で逆転された。最後までボギーなしで回りきったが、それでも初優勝は遠かった。

最終18番パー4で、決めれば阿部に追いつく6メートルのバーディーパットはわずかに外れた。直後にパーパットを決めた阿部の優勝が決定。すると佐久間は涙を止めることができず、最後のパーパットは泣きながら決めた。「自分の中でも、すごくいいゴルフができた18ホールでした。それでも勝てなかったのは、まだまだ自分の実力不足」と、目を真っ赤にさせて話した。

18ホールを戦い終えると、阿部と抱き合って健闘をたたえ合った。「笑顔で未悠ちゃんをたたえようと思い、頑張りました」。泣き崩れそうな心を折ることなく、勝者を祝福した。地元埼玉県での試合、しかも中学生のころから練習して慣れ親しんだ石坂GC。初優勝を飾るのにふさわしい舞台は整っていたが、歓喜の瞬間は次戦以降に持ち越された。

初優勝に笑顔はじける阿部未悠 涙の佐久間朱莉に岩井姉妹寄り添う/女子ゴルフ最終日写真特集3