<米女子ゴルフ:トレスマリアス選手権>◇最終日◇2日◇メキシコ・モレリア、トレスマリアスGC(6539ヤード、パー73)

 世界女王ロレーナ・オチョア(28=メキシコ)の引退試合で、宮里藍(24=サントリー)が涙の優勝を飾った。首位スタートの最終日、67をマークして通算19アンダーの273で、2位以下を1打差で振り切った。表彰式では親友オチョアと抱き合って号泣。ウイニングボールを贈った。日本選手では88年岡本綾子以来となるシーズン3勝で通算4勝目。賞金ランクは1位浮上、世界ランクも3位に浮上。ポスト・オチョアの最有力候補として、“女王のバトン”を受け取った。

 宮里藍が叫んだ。

 「ロレーナ!」

 表彰式の18番グリーン。祝福に来てくれたオチョアの姿が、にじんで見えた。抱き合った。涙がボロボロあふれ出た。

 「サンキュー」

 それだけ言ってウイニングボールを手渡した。「勝ったら、絶対にあげるんだと決めていた」という。

 優勝スピーチでは、オチョアへの思いを語るたびに、声が詰まった。メキシコが生んだヒロインをたたえる日本のヒロインを、地元の大観衆が拍手でたたえる。まるで世界女王から次期女王への“戴冠式”だった。

 「ロレーナから学んだことは本当にたくさんある。情熱だったり、国を思う気持ちだったり…。強くて、優しい選手はロレーナが一番。性格が似ているところがあるから、学んだことを将来につなげていきたい」

 勝てば今季3勝目、賞金ランク1位に返り咲く-。首位で迎えた最終日。「自分の中で、すごく覚悟があった。『絶対に自分のプレーをして、絶対に勝つんだ』と思っていた」という。

 初日から変わらぬ強風の中、同組にウィー、リンシカムという飛ばし屋2人。ドライバーが、リンシカムの3番ウッドに越えられる場面もあった。だが、気にしない。ルイスも含めた混戦を、8番からの4連続、13、14番の連続バーディーで抜け出した。

 最終18番パー5は第1打を左に曲げた。「緊張で足に全然力が入らなかった。4つ勝ったうちで、こんなのは初めて」。最後は4メートルのパーパット。外せば、ルイスとのプレーオフ。少しフックのスネークラインを沈めると、ひざから崩れ落ちて、両手を握りしめた。

 米ツアー5戦3勝の今季、新たな試みが実を結んでいる。クラブは自分で選ぶ。これまで帯同キャディーのミック・シーボーン氏の助言を仰いできたが、こうと決めたら、自信を持ってジャッジを貫く。「アイは決して飛ぶわけではないけど、誇りに思うべき」とオチョアがたたえるコースマネジメント、ショットの距離感、精度-。「宮里藍オリジナル」のスタイルは、頂点を狙える域まで来た。

 賞金ランクは首位に返り咲いた。5位だった世界ランクも3位に浮上。アニカ・ソレンスタム引退後、07年4月から3年間、オチョアが守ってきた世界一の座は、すぐそこだ。

 「ライバルは自分自身。ロレーナから吸収したことを生かすことができれば、ナンバーワンも近い」

 本気でオチョアの後を継ぐ。6日から、国内メジャー初戦ワールド選手権サロンパス杯(茨城GC西C)に凱旋(がいせん)出場。日本のファンに一層たくましくなった姿を披露する。