女子シングルスで平野美宇(エリートアカデミー)が史上最年少となる16歳9カ月で初優勝した。2年連続となった石川佳純(23)との決勝で持ち前の攻めの姿勢を貫き、4-2で勝利。昨年のリオデジャネイロ五輪代表から落選した屈辱を糧に初の日本一に輝いた。

 3年後、東京五輪が開かれる東京体育館に高校1年生のおえつが響く。優勝インタビューで平野は「リオに出られず、悔しくて絶対優勝したかった」とむせび泣いた。史上最年少16歳での優勝。勝って泣くのは初めてだった。

 昨年と同じ石川との決勝。3連覇中の女王に1歩も引かない。攻撃的な卓球で第1、2ゲームを先取。3-1で迎えた第5ゲームは8-2から逆転されてもひるまない。「普通にやったら勝てる」と強気を貫き、4-2で振り切った。

 15年秋に五輪代表から漏れるとラリー重視の守りから、攻撃的なスタイルに変更した。週3回、1時間の筋力トレーニングを導入し、パワーアップを図った。大好きなお菓子の間食もやめて食生活も改善。石川が「レシーブがスマッシュのようだった」と驚くほどの攻撃的な卓球に変わった。

 リオデジャネイロでは補欠として球拾いや、同学年の伊藤らの練習相手を務めた。当初は「行く意味がない」と泣いてばかりだったが、途中から「それでは意味がない」と改心。代表の石川、福原、伊藤のプレーで気付いたことを「リオノート」に記す。客観的に、冷静に五輪を見たことで戦術面の幅を広げた。

 「代表になれなかったのは五輪への思いが足りなかったから」。決勝前日には「(石川に)勝てる」と強気に言い切った。「もう好感度は気にしない。嫌われても、勝てばいい」と勝負に徹した。決勝ではピンチでもまったく動じず、自分を信じ切ることができた。

 団体の銅メダルを間近で見たリオでは、表彰式後にメダルをかけてもらえそうになったが「首からかけるのは東京で」と拒否した。東京五輪のシングルス代表は3人。まずは5月の世界選手権で「中国人を倒してメダルを取る」。東京五輪での金メダル獲得の夢へ、最高のスタートを切った。【田口潤】

 ◆平野美宇(ひらの・みう)2000年(平12)4月14日、静岡県沼津市生まれ。3歳から卓球を始める。10年1月の全日本選手権一般の部に史上最年少の9歳で初出場。14年3月にドイツオープンで同学年の伊藤美誠と組んだダブルスでワールドツアー史上最年少の13歳ペアで優勝。昨年は1月の全日本選手権準優勝、10月のW杯米国大会で史上最年少の16歳で優勝。昨秋から中国スーパーリーグに挑戦。世界ランキング9位。158センチ、45キロ。

 ◆卓球全日本選手権のシングルス最年少優勝 女子は89年に優勝した佐藤利香の17歳1カ月を16歳9カ月の平野が抜いた。男子は07年優勝の水谷隼の17歳7カ月。