1968年メキシコ、72年ミュンヘン、76年モントリオールの五輪3大会の体操男子で日本最多の金メダル8個を獲得した白鴎大教授の加藤沢男氏(70)の最終講義が7日、栃木県小山市の同大で行われ、一般ファンを含めた約300人が聴講した。五輪での活躍をまとめた映像が流れた後、体操との「出会い」をテーマに自らの競技生活、その後の研究者、指導者としての歩みを約1時間、静かな口調で語った。

 母校の筑波大を退官後の2010年から白鴎大教育学部発達科学科で主に体育教員を目指す学生に持論の「感覚の運動学」を講義し、体操競技を指導してきた。「運動をやるのは自分。コツを教えてと言われても、その人にしかできない感覚がある」と言い聞かせてきたという。

 2012年ロンドン、16年リオデジャネイロ両五輪で男子個人総合を2連覇した内村航平選手にかつて「世界一になるやつは世界一練習している」とアドバイスしたことについて聞かれると「そんなこと言ったかな」と笑わせた。

 大舞台で力を発揮するにはとの質問には「練習で(課題を)つぶしていくしかない。敵は自分なんです」と工夫を重ねて技を磨き上げ、勝負強さを培ったことを明かした。今後は時間をかけ、技の感覚を易しい言葉で表現した運動学の著作をまとめるという。