「水泳なんかやめる」。2年前、水泳部の同期、岡田マネジャーに言い放った。原因不明の体調不良で大学1年の終わりから2年秋まで、思うように泳げなかった。結果も出ず、水泳が嫌いになった。自暴自棄になりかけたが、精密検査で極度の貧血が判明した。薬と、アサリなどの鉄分を増やす食事改善で体調は回復。練習が積めるようになると、水泳がまた楽しくなってきた。

 昨年日本選手権は五輪代表こそ逃すも、3位と初の表彰台で自信を得た。今年2月のコナミオープンでは日本記録に0秒69迫る好タイムをマーク。同下旬からは標高2320メートルのスペイン高地合宿に初参加。リオ五輪金メダリスト萩野らと1日1万3000メートルを泳ぎ、スタミナとパワーを増して、大会に臨んでいた。

 池江ら中高生から活躍する女子水泳界にあって、大学4年で初の世界選手権を迎えることは珍しい。「1歩1歩頑張って、メダルにつなげていきたい」。

 遅咲きの21歳は、夏の世界選手権、3年後の東京五輪へ、これまで通り、愚直に努力を重ねていく。【田口潤】

 ◆大橋悠依(おおはし・ゆい)1995年(平7)10月18日、滋賀県生まれ。幼稚園で水泳を開始。彦根東中3年時のジュニアオリンピック女子200メートル個人メドレーで優勝。草津東高を経て14年に東洋大入学。昨年の日本選手権女子400メートル個人メドレーは3位。昨年11月のアジア選手権200メートル個人メドレーで優勝、400メートル個人メドレー3位。趣味は嵐の音楽鑑賞で、好きなメンバーは大野智。173センチ、55キロ。

 ◆世界選手権代表選考 個人の五輪種目は、日本選手権の決勝で日本水連が新たに定めた世界ランク24位前後相当の「標準記録」を突破して2位以内なら代表決定。ただしリオ五輪メダリストで日本勢最上位が当該種目に出場すれば代表とするため萩野の男子200メートル、400メートル個人メドレー、坂井(早大)の同200メートルバタフライは残り1枠。個人の非五輪種目とリレー種目は別の基準で選考する。