「絶対王者」の帝京大(関東対抗戦1位)が21大会ぶりの優勝を狙った明大(同2位)を21-20で下し、史上最多を更新する9連覇を達成した。後半に最大13点差をつけられたが、20分のCTB岡田優輝(4年)のトライなどで逆転。終了間際のピンチもしのぎ、逃げ切った。タイトルを重ねるたびに選手層が底上げされ、改めて勝負強さを示した。今季の公式戦を15戦無敗で終え、黄金時代が崩れる兆しはない。

 苦しんだ末の歓喜の味は格別だった。帝京大は前半を7-17で折り返し、後半は最大13点のリードを許した。「明治!」「明治!」。会場の約7割の明大ファンから声援が飛び交う“アウェー”。「厳しい時こそ楽しめ。勝ってもよし、負けてもよし。それが成長につながる」。岩出監督からの言葉を胸に、後半のラスト25分間に王者のプライドを見せた。

 明大の運動量が落ちた15分にロック秋山、20分にBKの連続攻撃でCTB岡田がトライを奪い、逆転に成功。終了間際、フッカーの堀越主将が故意の反則で一時退場したが、ロスタイムに明大の反則を誘発して激闘に決着をつけた。少ない好機を確実に得点につなげられたのも、大舞台での経験値の差だった。試合後は選手、スタッフの手で「胃が痛くなるゲームだった」と言う岩出監督を9回胴上げ。堀越は「我慢の時間を楽しめたことが勝因。完全燃焼出来た」と感慨深く思い返した。

 常勝軍団には毎年、連覇の数字ばかり大きくなる重圧がのしかかる。今季のテーマを「エンジョイ」とし、どんな状況下においても「楽しむこと」を心掛けた。「ピンチの時こそ力を発揮するチーム」(岩出監督)と表現するように、10点を追うハーフタイムは選手全員が笑顔で円陣を組んで士気を高めた。

 司令塔のSO北村ら1年生が萎縮しないよう、食事の準備やトイレ掃除などは4年生が担当する。学年が下がるほど負担が軽い「脱体育会系」が伝統だ。後半ものびのびとプレーした北村を起点に攻撃で好機を生み「後半に強い」帝京らしいラグビーを貫いた。

 今季から大学チーム枠の撤廃により、日本選手権は出場出来なくなった。パナソニックなどの強豪と対戦を待ち望んでいた堀越主将は「勝利で今季を終われたのも格別。後輩には(来季に向けて)また一から積み上げてほしい」と10連覇へ期待を込めた。【峯岸佑樹】