あと1点が遠かった。19大会ぶりに決勝に進出した明大は前に出る守備で王者・帝京大を苦しめ、前半を17-7とリード。後半のPGで一時は13点差をつけながら、20-21で逆転負けを喫した。21大会ぶりの大学日本一を逃して「完全復活」とはならなかったが、今季スローガンとして掲げた「NEW MEIJI」誕生のきっかけはつかんだ。

 「メイジ、メイジ」。大歓声が秩父宮のスタンドを包んだ。紫紺の小旗が寒風を突き破った。最後に優勝した96年に死去した北島忠治元監督も、4日に亡くなった明大野球部OBの星野仙一氏も天国から見つめる中、明大の15人は1つになって帝京大に挑んだ。

 圧倒的な劣勢が伝えられる中、試合を支配した。鋭い出足のタックルで攻撃を封じ、ミスのない連続攻撃でゴールに迫った。後半には13点差までリードを広げた。しかし、その後2トライ2ゴールで逆転され、最後まで追いつけなかった。

 「キックを1本でも入れていれば」と、SO堀米は号泣した。「FWに固執せず、BKに回していれば」と丹羽監督も悔やんだ。それでも、今季対抗戦14-41と大敗した相手を追い詰めた。OBやファンの声援も最後まで届いた。「19年の思いが詰まった声援を聞いて、楽しかった。明治に来て良かった」とロックの古川主将。CTB梶村も「何度も帝京大に負けてきたけれど、今回はやり切った感がある」と胸を張った。

 昨春就任した田中ヘッドコーチは、就任直後に全部員92人と個人面談。「新しい歴史を作ろう」と呼び掛け「NEW MEIJI」と合宿所の入り口に張り紙を掲げた。「Aチームだけ強化しても、バラバラになる」とBチーム以下を徹底して鍛えた。「1月7日(大学選手権決勝)をベストで迎える」を、全部員の共通目標にし、ここまで「チーム」を作り上げた。

 「まだ届かなかった。でも、少し近づいた」と田中コーチ。就任5年目、部員とともに合宿所で生活し、早朝には「学生は寝たいだろうから」と風呂掃除をこなす丹羽監督も「この経験で、チームは成長する」と話した。9連覇の王者まであと1点。低迷した紫紺のジャージーが完全復活へ「前へ」出た。【荻島弘一】