日本レスリング協会は8日、都内で定例の理事会を開き、国別対抗戦の女子ワールドカップ(W杯=17、18日・高崎)日本チームから栄和人強化本部長(57)を外すことを承認した。伊調馨(33=ALSOK)を巡るパワハラ問題で心身衰弱状態にあるためで、本人から辞退の申し出があった。また、会見した馳浩副会長(56)は協会として伊調への全面的なサポートを約束。本人が望む環境を用意すると明言した。

 普段は静かな東京・渋谷の岸記念体育会館が、100人を超す報道陣であふれかえった。理事会開始は午後6時30分からだが、朝からテレビカメラが集まるなど異様な雰囲気。常務理事でもある栄本部長が欠席する中、理事会は報道陣を会議の行われる階からシャットアウトして始まった。

 パワハラ問題は定例の議題終了後の約20分間、話し合われたという。経緯説明の後、倫理委員会選任の第三者委員の弁護士3人を承認。さらに、栄本部長のW杯参加辞退が承認された。通常は理事会後の会見は高田裕司専務理事が行うが、告発状に名前があったこともあってか、この日は元文科相の馳副会長らが対応。馳副会長は自宅で療養中の栄本部長について「電話で話したが、消え入りそうな声だった。憔悴(しょうすい)しきっていた」と述べた。

 女子W杯は毎年行われる国別の対抗戦。前年の世界選手権上位8カ国が参加するチーム戦で、日本では4年ぶりに開催される。監督は笹山秀雄氏だが、栄本部長が指導する至学館高、大学の現役、OBが日本代表メンバー20人中11人いて、不在の影響は大きい。選手たちは師を欠いて4連覇に臨まなければならない。

 馳副会長はパワハラ発覚に「そんなことがあったのかという思い。この時期になぜ、という戸惑いしかない」と話し、伊調については「本人が話しやすい環境を作る。東京五輪に向けてこうしたい、というのがあれば全面的に支援する」と約束した。問題発覚直後に「パワハラはない」と全面否定した日本協会が、少しずつだが動き始めた。