「超級」の期待のホープが輝きを放った。17歳の素根輝(福岡・南筑高)が決勝で冨田若春(コマツ)を下し、史上初の初出場優勝を果たした。17歳9カ月での優勝は、93年に16歳11カ月で制した五輪女王の阿武教子に次いで史上2番目の若さ。準決勝では17年世界選手権銀メダルの朝比奈沙羅(パーク24)に勝利し、存在感を示した。大会後の強化委員会では9月の世界選手権(アゼルバイジャン)女子代表が発表された。

 前へ、前へ-。事実上の“決勝”となった朝比奈との準決勝。162センチの素根は小柄な体格を逆手に、相手の懐に何度も入った。圧のかかる組み手争いで負けないよう左の釣り手を下げず接近戦に持ち込んだ。

 試合開始3分24秒。両者指導2で、有効を奪われたが取り消されて「スイッチが入った」。延長3分5秒、反則勝ちを収め、その勢いで初優勝を勝ち取った。「負ける気がしなかった。スタミナ勝ち。朝比奈選手に勝たないと東京五輪はないので結果が出て良かった」と胸をなで下ろした。

 7日の全日本選抜体重別選手権決勝で、4戦目にして朝比奈に初勝利。柔道人生で初めて涙した。「優勝よりも勝てたことが自信になった」。世界一になる夢が「目標」へと変わった瞬間だった。

 強みは「誰にも負けない練習量」だ。乱取りは自身が納得するまで続ける。帰宅後は自宅車庫を改造したトレーニングルームに約2時間こもり、兄と一緒にベンチプレスや柱に付けたロープを使って投げ技を磨く。体重はこの1年で10キロ増量だが、超級とは思えない俊敏さを身に付けた。高校に同階級の練習相手が少ないため、長男の勝さん(22)が付け人として支える。

 決勝前には勝さんから「笑って帰ってこい」と背中を押された。「お兄ちゃんのためにも優勝したかった。本当に感謝しかないし、少しは恩返しできたかな」と笑う。世界選手権の個人戦代表には惜しくも落選したが「下を向いている時間はない」と言う。2年後に真の輝きを放つために、努力を重ねることを誓った。【峯岸佑樹】

 ◆素根輝(そね・あきら)2000年(平12)7月9日、福岡県生まれ。小1で柔道を始め、小6で全国小学生学年別大会45キロ超級優勝。全国中学生大会では70キロ超級で2連覇。15年世界カデ柔道選手権優勝。17年GS東京大会準優勝。得意技は大内刈りと体落とし。趣味は音楽鑑賞。家族は両親と姉と兄3人。162センチ、110キロ。血液型A。