スポーツ庁の鈴木大地長官(51)が6日、都内で日本スポーツ仲裁機構(JSAA)主催の「第15回スポーツ仲裁シンポジウム」に出席し、日本スポーツ界におけるコンプライアンス体制の基本方針などについて語った。

基調講演で登壇した鈴木長官は、冒頭でJSAAが発足するきっかけとなった00年シドニー五輪の競泳代表選考について触れた。シドニー五輪代表選考会の日本選手権。女子200メートルで優勝し、五輪参加標準記録を突破しながら代表から落選した千葉すず(43)は、スポーツ界のもめ事を解決するスポーツ仲裁裁判所(CAS)を提訴。

鈴木長官は当時を「そんなことがあるんだと驚いた記憶がある」と振り返った。03年4月に発足した日本仲裁スポーツ機構(JSAA)が実際に仲裁に至ったケースは代表選考に関するものが最も多く、全体の4割超。「年々増える傾向にあり、どの組織でも起こり得る可能性はある」と警戒心を高めた。

鈴木長官は不祥事が続くスポーツ界について「現状のままでは公的資金投入の正当性が問われかねない」と危機感を募らせる。水泳界でも4年前、仁川アジア大会で男子選手がカメラを盗んで日本選手団から追放される不祥事があった。鈴木長官は「その裏でメダルを獲得した選手はいたが、注目はほとんどそっち(不祥事)へ集まってしまった」と、苦い経験を振り返った。