ミスターハンドボールの宮崎大輔(37)が、大学ハンドボールに戻ってきた。

大崎電気とのプロ契約を3月いっぱいで打ち切り、日体大3年に復学した宮崎が中大戦で16年ぶりに大学公式戦に出場。シュート4本で1得点ながら攻撃をリードした。チームを40-24の大勝に導き「緊張したけれど、勝ててよかった」と笑顔で話した。

大学ハンドに異常事態が起きた。宮崎の復帰戦に報道陣が殺到。狭いコートサイドにテレビカメラが並んだ。この日は、会場となった体育館で1部5試合が行われたが試合を終えた選手たちも帰ろうとせず、コートを見下ろす2階の通路に何重もの人垣ができた。

前半15分過ぎ、白地に紺のユニホームに身を包んだ宮崎がコートに立つと、視線は背番号「77」に集まった。日本代表と同じ左サイドでのプレー。チームでの練習は6日からで1週間しかしていないが、大きな声で指示を出してチームメートを動かした。「年齢がダブルスコア」と笑う1年生とも好連携をみせた。

日本リーグの強豪大崎電気では出場機会も限られ、思うような活躍もできなくなっていた。20年東京五輪出場を目指して出した結論が「移籍」。それも古巣の日体大への復学だった。37歳の大学生活は「勉強が大変ですね」と言うが「練習量は増えました。きついけれど、もっとスキルと基礎体力をつけたい」と新人らしく話した。

チームにも「大輔効果」が表れていた。松井幸嗣監督は「大輔は自分から学生の中に入っていくので、チームのムードはいい。昔はやんちゃだったけれど、プロでやって人間的にも成長している」と16年前を振り返って話した。後半26分過ぎに宮崎が復帰初ゴールを決めると、ベンチの選手は総立ちで祝福。年齢差はあるが、チームの一員として完全に溶け込んでいる。

「最初は不安もあった」と川上勝太主将(4年)は明かすが、宮崎と4年生全員の食事会で思いをすべてぶつけ合ったという。「大輔さんのおかげで、チームは変わった。中大に勝ったのは初めて。それも、こんな大差で。やっぱり、すごい人です」。昨年高校3冠の富山・氷見高から日体大入りした1年生の窪田礼央は「教わることは多いし、楽しいです」と話した。

宮崎は「ちょっと、今日は力が入りすぎた」と笑いながら「コートの上では年齢は関係ない。日本代表に残るためには、若い選手に負けないくらいに走る必要がある」と決意を込めていった。宮崎を加えた日体大が目指すのは、7年ぶりの関東リーグ優勝や4年ぶりの大学選手権優勝だけではない。「目標は大学を跳び越えて世界」と松井監督。その先には、04年アテネ大会予選から敗れ続けてきた宮崎が悲願とする五輪(オリンピック)出場がある。