【ヌルスルタン=阿部健吾】女子53キロ級で向田真優(22=至学館大)が決勝進出を決め、表彰台が要件だった東京五輪代表に内定した。

準決勝ではマリア・プレボララキ(ギリシャ)に4-0で勝利した。五輪3連覇の吉田沙保里が長く君臨した階級。そのあこがれの人から直前に「1発で取ってきなよ」とハッパを掛けられていた大一番で、見事に結果を残した。

眠れない日々があった。6月の全日本選抜を制して代表が決まった後の7月、毎夜ベッドで3時間以上。「世界選手権のことを考えすぎて。緊張もあって、寝る前に試合のビデオとか見ると考えすぎてしまった」。10時に布団に入るが、それから1時半まで考えに考える日々があった。

一つの転機は8月に日本武道館で開催された柔道の世界選手権をテレビで見せたことだった。男子66キロ級の準決勝でけがをしながら丸山城志朗がライバルの阿部一二三を破った姿を見て、「やっぱり気持ちの強い方が勝つんだ」と身に染みた。かねてメンタル面が課題と自認しており、寝られない日々に終わりを告げたのは、「私も勝ちたい」という思いを再確認することだった。

五輪との関係は深い。12年5月の東京五輪・パラリンピックの招致会見に登壇した。中1でJOC(日本オリンピック委員会)が運営する寄宿制の選手養成所のエリートアカデミーに入校し、その代表として参加。「東京五輪で金メダル獲得」という強い思いになった。14年にはユース五輪(南京)にも参加し、圧勝の連続で金メダルを獲得している。東京五輪の「申し子」として、ついに舞台への切符をつかんだ。