昨年9月の世界選手権で44年ぶりの団体総合銀メダルを獲得し、一躍東京オリンピック(五輪)の金メダル候補に名を連ねた新体操日本代表「フェアリージャパンPOLA」。代表選手のセレクション制を導入し、1年間で350日以上の共同生活で鍛え上げてきた強化制度の集大成に思える舞台が夏に待つが、トップの山崎浩子強化本部長(60)の捉え方はユニークに際立つ。

数年前からはやるアドラー心理学では、「他者は操作できない」とする。これを実践していたのがボクシングの村田諒太だった。17年5月、初の世界ミドル級世界戦のリングで、エンダムに不可解判定で敗れた直後、こう言った。「結果は結果。僕自身がどう受け止めたかではない。第三者の判断が全て」。アドラー本の愛読者は、「他人がどう考えるか、どう見るかは操作できない。自分のできることに集中する」と試合前から口にしていた。審判という操作できない事象に乱されず、「理論を実践できた。自分を褒めたい」と後に語った。

新体操も採点競技で、そこはボクシングと相似している。そして同様に、他人の金メダル(世界王者)への期待も操作できるものではない。そこに心を砕くのではなく、毎日をやり切ること。村田は17年10月、エンダムとの再戦で世界王者となった。フェアリーたちにも、輝ける時が待っていることを願う。