16年リオデジャネイロオリンピック(五輪)男子400メートル個人メドレー金メダルの萩野公介(25=ブリヂストン)が、厳しい現実を突きつけられた。

五輪選考を兼ねた日本選手権(4月1~8日、東京アクアティクスセンター)を前に最後の同種目で4分20秒42の4位。日本水連が定める派遣設定記録に5秒18及ばなかった。昨春の休養から復帰ロードを歩んできたが、残り1カ月半でV字回復を実現するしかない。

   ◇   ◇   ◇

萩野はレース直後、取材エリアを素通りした。サブプールで体をほぐしてから姿を現した。「(直後は)適切な言葉が出ないと思って素通りしてしまった。自分の言葉でなく、うそを言ってしまいそうだった。すみません」と頭を下げた。

うまくいかない。予選は4分21秒56、決勝は4分20秒42。自己ベストの4分6秒05には遠く及ばない。「練習はある程度やっているが、『大丈夫か?』と自分で自分の首を絞めていた。泳ぐ前から怖いという、不安な気持ちがあった」。昨年大会は休養前最後のレースとなった因縁があって、心が揺れた。「泳ぎうんぬんではなかった。泳ぎとか技術に悪いところはあるが、それよりも大事な部分がある」と素直に認めた。

昨年8月からレース復帰して、この日は日本選手権前ラストだった。復帰途上のレースとは意味合いが違うと本人は理解している。「それでもやれることは1歩ずつやること。人生をかけて歩んでいる最中なので。悔しいし、情けない気持ちはあるが、今の僕はこれかなと受け止める」。今日16日は200メートル個人メドレーに出場。「1本1本集中して泳いでいく」。残された時間は多くないが、萩野はベストを尽くすことを追求していく。【益田一弘】