第100回の記念大会となる全国高校ラグビーは12月27日から大阪で開催される。東北地方からは各県1位の6チームと、各県2位校による東北代表決定戦を制した黒沢尻北(岩手)が出場する。第1回は青森代表で、2年連続2度目の出場を決めた青森山田を紹介。前回大会は初出場ながら全国1勝を挙げ、2度目の今回は、さらなる飛躍を目指す。

広いフィールドでも、ひと際目立っている。170センチ、122キロの巨漢プロップ下村湧偉(3年)。スクラムの中心を任され、相手FWとの激しいセットプレーにも、決して負けない。青森北との決勝戦を前に右肩と右膝を負傷。それでも、痛み止めを服用して先発出場を果たし、チームを連覇に導いた。下村は「また花園でプレーできるのが、楽しみで仕方ない」と喜びをかみ締める。

幼いころから相撲に取り組み、小4でわんぱく相撲日本一に輝いた逸材。十和田中では柔道部に所属し、90キロ超級で東北大会に出場した。青森山田には一般入試で入学したが、その堂々たる体格をラグビー部の橋本高行監督(38)に見初められ勧誘を受ける。下村は「球技の経験がなかったけど、やってみよう」と、ラガーマンの道を選んだ。

1度は退部を考えた。入部して約2カ月後、大きな壁にぶち当たった。脚力のスピード、長時間走り切るスタミナに限界を感じ、「自分には無理だと思って、辞めたくなった」。そんな時、同期のチームメートから「大丈夫だよ、頑張ろう」の励ましに救われた。短距離ダッシュ、ゴールポスト間走などの走り込みで課題を克服。下村は「仲間がいたから、ここまで続けられた。本当に感謝していますし、選手全員が仲良し」と、絆を深めていった。

実家のある十和田市からの通学が困難なため、入学時から青森市内の祖父母の家で暮らす。祖母の手料理が力の源になっており「どの料理もおいしくて、厳しい練習を耐えるモチベーションになっている。大好物は唐揚げです」と満面の笑みを浮かべる。全国大会に向け「今まで支えてくれた方々に、感謝の気持ちを持って、1つ1つプレーしたい」。2度目の聖地で、恩返しをする。【佐藤究】