東京オリンピック(五輪)の卓球男子シングルス代表の張本智和(17=木下グループ)がコロナ禍の全日本で、もう1つの戦いを強いられている。6回戦で御内健太郎(31=シチズン時計)に4-3で勝利。4大会連続で8強入りしたが、感染対策で試合中の大声について自粛を求められた。自分を鼓舞するための声出し「チョレイ!」が思うようにできず、苦闘している。

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マッチポイントを握られながらもしのいで迎えた最終ゲーム。11-8と勝利の得点をもぎ取った瞬間、張本は代名詞「チョレイ!」の大絶叫とともに、思いっきりジャンプした。「昨年の準決勝、決勝より苦しかった」試合で、喜びを爆発させるのは無理もない。ただ、コロナ禍での大会。「不要な声出しや大声を出さない」ことが求められていたためその直後、審判に丁寧に頭を下げ、謝るしぐさを見せた。

張本はかねて試合中の大声は自分を鼓舞し、アドレナリンを出すために必要不可欠との見解を示してきた。スポーツ選手は自分のモチベーションを上げる手だてを人それぞれの方法で持っている。

会見で「声を出せない取り決めは、やりづらい面もあるか」と問われ「ルールは知っています。極力抑えるようにはしていますが、勝負事ですから声を出すことで全力を尽くせるし、相手への敬意だとも思っています」と語った。審判から何度も注意を受けたといい「やりづらさはあるが、配慮してやっていくしか」と本音を漏らした。

この日は明大の選手からコロナの陽性者が出て、濃厚接触者の疑いがある3人が棄権する事態となった。それを受け「棄権する選手もいて複雑な思いがある。でも僕は出る以上、全力で戦っていくのが、この大会への恩返しだと思います。今日はそれが体現できた」と、出場したくても出られなかった選手らをおもんぱかった。

昨年12月に、腰を痛めていたが「今日は3試合戦えた。不安は解消された」と明るい兆しが見えてきた。昨年の大会で目立った消極的なプレーも今年は見られず「今日は思い切り攻めて、相手が上回ったらしょうがないという気持ちでやった」と精神面でも向上。思うような声出しはできない中、3年ぶり2度目の優勝目指して突っ走る。【三須一紀】