東京オリンピック(五輪)柔道女子78キロ超級代表補欠で18年世界女王の朝比奈沙羅(24=ビッグツリー)が8日夜、世界選手権(ブダペスト)に出場するため羽田空港から出発した。

出国前にオンライン取材に応じた元世界女王は、4度目の大舞台に向け「18年に世界王者になってからタイトルから遠ざかっている。今回は強い気持ちを持って、王座奪還できるように試合に臨みたい」と決意を語った。

昨年2月のグランドスラム(GS)デュッセルドルフ大会以来の国際大会。同12月の全日本女子選手権では初戦の2回戦で敗退し、今年4月の全日本選抜体重別選手権は肋骨(ろっこつ)骨折により欠場した。試合勘に不安が残るが「緊張感がある方が自分としては良いパフォーマンスが出せると思う」と集中力を高める。

昨春に独協医大医学部に入学し、医学生と柔道家の二足のわらじを履く。五輪代表補欠に選出されも、全日本柔道連盟の強化委員会では稽古不足の懸念などの厳しい声も出た。「これまでも逆境で成長してきた。『結果で黙らせてやる』という考えでやってきたので、今回はその思いや火がより強くなった」と、静かに闘志を燃やす。

先月には、柔道選手では異例の独協医大ラグビー部に選手兼マネジャーで入部した。現役中は柔道に集中するためプレーはせず、部活にもほぼ参加しない条件付きだが「心の癒やし」を作ることでより二刀流を極める考えだ。

「結果が全て」と自身に言い聞かせ、独自の道を歩み続ける24歳の柔道家。「闘う医学生」は、強い覚悟を胸に機上の人となった。