重量挙げ女子でオリンピック(五輪)2大会連続メダルの三宅宏実(いちご)が、36歳の誕生日を迎えた18日に都内で会見を開き、21年間の競技生活を終えた。「多くの方々の支えがあり、競技を続けることができました」と感謝で始まった会見では、問いに「ご質問ありがとうございます」と返すなど、実直な人柄がにじんだ。

おじの義信さんが64年東京大会から2連覇、68年メキシコ五輪では父義行さんも銅。00年シドニー五輪で女子が採用されたのを機に競技を始めた。「どれだけ強くなったか、はっきりわかるからこそ、やりがいがあり、無我夢中になれた」と魅力を語った。

東京五輪後に、引退を表明。「今後は、所属のいちごでコーチとして、選手の成長とともに私自身も高めていきたい」と指導者の道に進む。12年ロンドン五輪の銀メダリストとして臨んだ16年リオ五輪では、選手村では壁に手をつかないと歩けないほどの腰痛を抱えながら、ここ一番で銅メダル。その勝負強さを伝授する。

心遣いの人でもある。長く代表活動で一緒だった後輩の松本潮霞は「練習で元気がないと、お菓子や入浴剤にお手紙つきで励ましてくれた」と振り返る。「これで身も心もリフレッシュしてまた一緒に頑張ろう!」。そんな文面に表れる優しさは、これからも後輩の大きな助けになるだろう。

「(誕生日で)年を重ねた日にけじめ。新たな良いスタートが切れるように頑張っていきたい」。146センチの小さな体で支えた、体重の2倍にもなるバ-ベル。その雄姿を刻み、これからも日本重量挙げ界を支えていく。【阿部健吾】

◆三宅宏実(みやけ・ひろみ)1985年(昭60)11月18日、埼玉・新座市生まれ。新座二中3年から競技を始める。五輪は04年アテネ9位、08年北京6位、12年ロンドン銀、16年リオ銅、東京五輪は記録なし。家族は両親、兄2人。プロ野球でバース(阪神)落合博満(ロッテ)が3冠王に輝いた年に生まれたため、うかんむりが3つ並ぶ「三宅宏実」と名付けられた。146センチ。