もうベスト4はいらない。16年以来5年ぶりの花園制覇を目指す東福岡は、是が非でも優勝旗をつかみにいく。17年から4大会連続で4強止まり。藤田雄一郎監督(49)は一切の笑みも浮かべずに「ベスト4と優勝は全く違う。ベスト4では許してはくれない」と、頂点だけを渇望した。

命運は心臓に委ねられた。SO楢本幹志朗(3年)。21年の高校日本代表候補で、巧みなゲームメークが光る。「自分が突破することよりもアシストプレー、そしてチャンスメーク。チームが勝つことが最優先です。自分のパス、キックでトライになった時はうれしい」。昨年の花園では2年生ながら優秀選手にも選ばれた。藤田監督も「ここ数年にはいないクレバーな選手。多分来年は楢本ロスになるんでしょうね…」と絶大な信頼を寄せる。今春の選抜大会を制覇した優勝候補・ヒガシには、頼もしい司令塔がいる。

元々は県内屈指の進学校、修猷館への進学を目指す秀才だった。「1を言えば、10を理解する選手」。藤田監督は楢本をそう表現する。時には「自分が言おうとしたことを幹志朗が言ってくれた」と、指揮官の意図をくみ取ってきた。楢本は「藤田先生は自主性を重んじていたので、選手間だけのミーティングも多かった。そこで僕もしゃべる回数が多くなって。自主性はそうやって身に付いたんだと思います」と、成長曲線を振り返った。

将来の目標は22年1月に開幕するラグビーの新リーグ「リーグワン」でプレーすること。「正式にプロ化したことによって自分の目標も明確になりました。プロになるために高校、大学で何をしなければならないのかをもう1度改めて考えています。自分にとって刺激になりました」。青写真を描く17歳が、まずは高校ラグビーの頂点に立つ。【只松憲】

◆楢本幹志朗(ならもと・かんじろう)2004年(平16)1月16日、福岡県福岡市出身。4歳の時に草ケ江ヤングラガーズでラグビーを始める。西新小を経て百道中へ進学。同中ではラグビー部と草ケ江ヤングラガーズの両方に所属した。ポジションはSOで21年高校日本代表候補。好きな教科は古典。趣味は音楽と映画鑑賞。家族は筑波大ラグビー部の兄鼓太朗さん(3年)と父、母。177センチ、84キロ。