フィギュアスケートのペアで愛称「りくりゅう」こと三浦璃来(24)木原龍一(33)組(木下グループ)が17日、互いのSNSを更新し、今季限りでの現役引退を電撃発表した。
2月のミラノ・コルティナ五輪で日本ペア初の金メダルを獲得。世界選手権でも2度の優勝を収め、日本フィギュア史を塗り替えた2人が連名で「やり切った気持ちでいっぱい」と表明した。3月の世界選手権は欠場しており、ミラノが最後の演技となった。早ければ今月下旬に会見を開く予定。今後もペア関係を続け、種目普及と将来的な指導者転身を視野に、新たな道へ進む。
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「りくりゅう」の強さは何か。担当記者は、プロフェッショナルさと心のゆとりの調和に見る。
2人は競技と、とことん向き合ってきた。木原はシングル時代に世界ジュニア選手権10位になった実績があり、全日本選手権でも3年連続12位となった実力者だが、女子を持ち上げながら滑ることが多いペアに転向後は、肉体改造に着手。1日約6食の食事を課した。深夜にトイレで吐いたこともあったが「昔はSサイズだったものが、今はXLになったものもある」と体形は変化。体重を15キロ以上も増やしてみせた。
“SNS断ち”も自己管理の1つ。2度目の優勝を飾った25年世界選手権では、約1カ月前からSNSと距離を取った。「プラスになるものではない。これに時間をダラダラ使うのはもったいない」(木原)と2人で徹底した。
向上心も人一倍だった。25年4大陸選手権。2年ぶりの優勝を収めた翌朝に観客席に横並びで座り、アイスダンスの公式練習を約1時間見学した。表現力を学ぶためといい、三浦は「もともと練習を見たいと思っていた」。木原は「僕たちも勉強しないといけない」と、王者ながら当然のように言った。常に進化を求める姿勢が優勝翌日の一コマに表れた。
ただ、それだけでは息詰まってしまうことも知っていた。2人には自制心や高い意欲に加え、心のゆとりもあった。SNSを断った分、一緒に始めたのはゲーム。木原は「ゲームをやれている時は精神的に余裕がある。余裕があると、滑りにも余裕が出る」と言う。試合前は木原がわざと負ける独自ルールも生まれ、ミラノ五輪期間中も人気ソフト「桃太郎電鉄」で気分転換を図っていた。
ゆとりは言葉にも漂う。ミラノ五輪のSP後、ミスに泣きじゃくった木原を支えた三浦は「今回は私がお姉さん」と、逆転の金メダル獲得後に発言した。5日後のエキシビションでは三浦が閉め忘れた衣装のチャックを、木原が演技中にさりげなく閉め「今日は僕がお兄さん」とほほ笑んだ。常に“遊び心”もあった。
細部まで突き詰めるプロフェッショナルさ。目の前のことを笑顔で楽しむ心のゆとり。どちらかが欠けては、たどり着かなかったはずだ。大逆境から五輪で金メダルをつかめたのは、その両面が調和していたからこそだった。【藤塚大輔】


