体操男子で五輪個人総合2連覇の内村航平(33=ジョイカル)の競技人生最後の舞台となる「KOHEI UCHIMURA THE FINAL」が12日、東京体育館で開催された。

1月に引退発表した内村のために用意された演技の場。リオデジャネイロ、東京の両五輪の代表メンバー10人が集まり、採点なしの演技会で技を出し合った。

内村は19年以来となる6種目に登場した。両肩痛で鉄棒に専念していた近年から、「6種目やってこそ体操」の信念を体現するべく、満員の観客の前で雄姿を見せた。

1種目目の床運動は、最後は後方伸身宙返り3回ひねり。「目線が極意」と言う着地も決めて滑りだした。

2種目目は落下もあり「最難関」というあん馬。体の線が頭から足先まで真っすぐに伸びた高速旋回を台の上でやり切った。演技後には演技中の写真を見て、「腰がちょっと曲がっている。もうちょっととっての所が空間あると。全盛期は普通にできたんですけど、できなくなっているので、『ファイナル』ということです」と冗談もまじえた。

3種目目は「唯一仲良くなれなかった」というつり輪。肩に最も負担がかかる力技の種目で、最後は伸身サルトの着地でわずかに1歩動いた。「止めてない時点でまだまだ」と、引退舞台とは思えない発言も。

4種目目の跳馬では「これをやれば跳ばなくていいかなくらい」と語る、走りだす前の決めポーズも健在。体の正面で両手を縦に合わせる構えで、会場が沸き立った。試合ではやったことがないという「リ・シャオペン」を半分ひねりを少なくした技で、着地もわずかな1歩の動きに抑えた。

5種目目は「縦横無尽選手権」という平行棒。息をのむような静寂の中で倒立を決め、緩急ある演技でまとめた。

そして、最終6種目目は鉄棒。「最初は好きでも得意でもなかった。でも、最終的には親友になれた。鉄棒のことだけ考えてやってきた2年間だったので、一緒に生活している感じでした」と現役最後の最後にバーを握った。大技「ブレトシュナイダー」はバーに近づきすぎる場面もあったが、着地まで終え、万雷の拍手の中で約30年の体操人生の締めくくりとなった。【阿部健吾】