体操で、20人以上のオリンピアンを育て、2度のオリンピック(五輪)個人総合金メダルを獲得した内村航平さん(33)もジュニア時代に在籍した名門、朝日生命(東京・久我山)が、22年度を最後に、体操事業から撤退する。体操関係者が19日、明らかにした。

朝日生命は自社の厚生事業団が、70年代に実業団の女子クラブと、子どもを対象とした体操スクールを開始。男子では04年アテネ五輪団体金メダルの塚原直也、女子では09年世界選手権個人総合銅メダルの鶴見虹子らを生んだ。

朝日生命は東京・久我山に、同社の厚生施設として、広大な総合スポーツセンターを持っていた。陸上競技場に加え、同社が力を入れていたテニスも、コートだけで数十面の規模を誇った。

体操同様に同所でテニススクールも開校。テニス部は、日本リーグで男女合わせ8度の優勝を飾った。日本テニス協会は、91年から同社の室内コートをナショナルトレセンとして使用していた。そして、横の体育館では体操クラブとスクールが行われていた。

しかし、00年以降、不況もあり、同社はテニス部を廃部。広大な施設も売却し、現在ではマンション群が立ち並ぶ。その中で、唯一、生き残ったのが体育館で、同社の体操事業だった。

同社は直接的な経営からは手を引いたが、運営していた五輪金メダリストの塚原光男氏、日本体操協会で女子強化本部長を務めた千恵子氏の夫妻が営む塚原体操センターと、委託事業契約を結ぶことで、体操を存続させた。

しかし、18年に千恵子氏の「パワハラ騒動」が起こり、有望選手も生まれず、昨年夏の東京五輪には選手を送ることはできなかった。

また、他社の他競技でも多くの実業団が廃部に追い込まれている昨今、同社の最後の施設だった体育館での体操事業からも、撤退となった。