前澤友作さん、ジョニー・デップさん、お返事待ってます! セーリング女子で、東京オリンピック(五輪)49erFX級代表の“アンセナ”ペアこと、山崎アンナ(22=ナブテスコ)、高野芹奈(23=関大)組が、24年パリ五輪に向け、資金不足でスポンサーを大募集中だ。

セーリング国別対抗戦セールGPの日本チームの会見が10日、都内で行われ、山崎、高野組と、49er級の高橋レオ(23)、森嶋ティモシー(25=ともにJapan SailGP)組の4人の加入が発表された。その席上で、山崎、高野組から、49erFX級のパリに向けて、「資金が足りません。スポンサーを募集しています」(山崎)と、切実な声が飛び出した。

スポンサーを求めて、40社ほどにメールを送った。SNSのダイレクトメッセージを使い、実業家の前澤友作氏、俳優のジョニー・デップら、セレブ、巨大IT企業のマイクロソフト、METAなど70社ほどに営業をかけた。しかし「既読にもならないんです~」(高野)と、がっくりと苦笑いだ。

マイナー競技の悲哀だ。17年から東京五輪までは、1社独占で、スポンサーがついていた。同社は、年間2000万円ほどかかる資金など、2人を全面的にバックアップ。ヨットも欧州に2艇、国内に2艇を持ち、その他の用具や遠征費など経費を負担した。

しかし、東京五輪が終わると、当初の予定通り、契約満了。使用していた4艇も、同社の所有のためすべて返却した。その後は、すべてが自費。新艇で約500万円ほどの49erFX級のヨットだが「お互いに60万円ずつ出して120万円で中古を買った」(山崎)。その艇を欧州に置いている。

トップ選手になると、五輪を目指すには新艇が当たり前で、マストやセール(帆)もレースのたびに新品が常だ。セールは、世界の強豪なら、レースのたびに張り替える。しかし、「持っているのは2枚だけ」(高野)と、使い回し状態だ。

五輪種目ではないが、19年に始まった国別対抗戦のセールGPは、アメリカズカップと同様に、世界でも注目の競技だ。そのメンバーとして、遠征するときは、セールGPからの経費で、そのまま49erFXの遠征にも流用した。しかし、そのセールGPの日本チームも資金難で、今季はまだ参加がかなわない状態。まさに八方塞がりだ。

2人はセーリングのショップで、アルバイトにも精を出す。「貯金を崩しながらなので、減る一方」(高野)。その中で、前澤氏、デップらセレブのSNSに、長文のDMを送付した。笑い話ではなく、本当に切実な願いで、返事が来たら「泣いて喜びます」(高野)。

ジェンダーギャップ問題が取り上げられている昨今、女性アスリートの活動としても注目される存在だ。セーリングは、スポーツの中でも、最も自然を相手にする競技で、海洋国日本での認知度向上にも貢献したい。2人の夢の実現は、前澤さん、月旅行に比べたら、めちゃくちゃお得ですよ。【吉松忠弘】

▼チームアンセナのスポンサー関連連絡先 anx2asailing@gmail.comまで。

◆49er、49erFX級 海のF1と呼ばれるハイスピードヨット。全長4・9メートルで2人乗り。00年シドニー五輪から正式種目。49erFXは、マストが低く、セールの大きさが小さい艇で、女子種目として16年リオデジャネイロ五輪から採用された。最速40キロほどが出る。

◆セールGP 19年から始まった毎年行われる世界セーリング連盟公認の国別対抗戦。艇は双胴艇で、最速約100キロのスピードが出る。クルーは5人。年間7~8レースを各国で行い、総合優勝のチームには賞金100万ドル(約1億3000万円)が贈られる。日本は過去2シーズンともに準優勝。21年はコロナ禍で開催中止。