東京五輪・パラリンピック組織委員会は21日、最終の第50回理事会を都庁で開き、今月末30日付の解散と大会経費を承認した。14年1月24日に発足し、新型コロナウイルス感染拡大による史上初の大会延期を経験した約8年半。橋本聖子会長は「厳しい意見は多かったが、誰も経験したことのない大会を乗り越えた『人』がレガシー(遺産)。無観客は悔いが残るが、決断しなければ今はなかった」と開催危機を振り返った。

大会経費の最終報告は1兆4238億円。招致決定後、最初の見積もりとして16年12月に示した予算第1版(V1)の1兆5000億円(予備費除く)を762億円、下回った。武藤事務総長は「見積もり額より少ない着地はできた」と評価。経費分担は組織委6404億円、東京都5965億円、国1869億円。組織委は収支均衡となった。

無観客に伴う警備費の大幅削減など「徹底的な簡素化」(武藤氏)で追加経費を吸収した。ただ、有観客や訪日客の経済効果を失った代償がコスト削減につながった結果は皮肉だった。

さらに、都は今回の経費以外に暑さ対策やバリアフリー化などの関連事業として約7000億円を計上しており、実質的には2兆円を超えたといえる。一方、立候補ファイルで示した大会経費は7340億円だ。組織委は当時の為替レート1ドル88円で計算したと強調し、国際オリンピック委員会(IOC)の指定項目だけ記載する形式と主張するが、国民の理解は得られないまま30年の冬季五輪招致に札幌市が進んでいる状況だ。

理事会では、五輪の参加選手が1万1420人だったという確定の数字や、将来の五輪のあり方への提言をまとめた公式報告書も公表した。組織委は解散後、清算法人となり、未払いの可能性がある債権者らの対応に当たる。約1年が見込まれる清算後に正式消滅する。【三須一紀、木下淳】