アーチェリー五輪2大会メダリストの山本博(60=日体大教)が、13年ぶりのナショナルチーム復帰に王手をかけた。5日、東京・夢の島公園アーチェリー場で行われた23年ナショナルチーム選考会で11位(シード3選手含むと14位)に入り、6日の最終ラウンドに進む上位24人に残った。最終ラウンドの上位16人が24年パリ五輪出場の前提条件となる、ナショナルチームメンバーに決まる。
スタートは点数が伸びなかった。「ガチガチになった。メンタルコントロールを長年やってきた経験をもとに、心穏やかにプレーするもりが、全然できなかった」。40年以上のキャリアを誇る山本も“ナショナルチーム復帰”へ、目に見えない重圧に縛られた。
しかし、このまま大崩れしなかったのは、やはりキャリアなのだろう。中盤からスコアを伸ばし、着実に順位を上げた。「若い子たちも苦しんで、スコアが伸びていなかったので、これは1日粘れば生き残れるかもしれないと思ったら、安定してきた」。終わってみれば、危なげなく最終日に進出した。
弓の重量を通常より100グラム重くした。近年は楽に引ける安定感のある重い弓が主流で、トップ選手や多くの若い選手が使用している。3年ぶりの選考会に備えて、山本も2週間前に軽い弓から変更した。しかし、序盤で「とても最後までもたない」と、もとの軽い弓に切り替えた。そのとっさの判断も功を奏した。
最終日に上位16人(シード3選手含む)に入れば、世界選手権で銅メダルを獲得した09年以来のナショナルチーム入りが決まる。「長くやってきて、今年も全日本に出て、パリ五輪につながる選考会にも出られた。ハッピーエンドにできれば」と山本。そのハッピーエンドが、決して低くはないハードルであることも分かっている。
3日前に調べた9月以降の試合の平均スコアは655。この日のスコアは652と637でアベレージに届かなかった。「たまたま11位だったけど、明日はみんなスコアをガンガン上げてくる。こんな点数じゃ絶対に落ちる。少なくとも655点を出した上で、納得いく1日にしたい」。
10月31日に60歳の誕生日を迎え、“赤いウエア”で還暦初戦に臨んだ。「さすがに赤いちゃんちゃんこを着ると笑われるから、この試合で着るために9月に赤いウエアをつくっていた。若い子より派手でよかったよ」。試合後は会場内の練習場に直行してフォームを入念にチェック。勝負への執着は少しも衰えていなかった。【首藤正徳】


