アメフト選手として甲子園に帰ってくる。花巻東(岩手)硬式野球部で今春センバツにも出場した八木駿太朗外野手(3年)が、25日までに関西学院大に合格した。187センチ、92キロの恵まれた体格、野球部屈指の身体能力を生かし、未経験ながらアメリカンフットボール部に入部予定。関西学生リーグ1部に所属する関学大は、甲子園ボウル(全日本大学選手権決勝)で4連覇中かつ歴代最多32度の優勝を誇る。自身2度目の聖地を目指し、野球の名門からアメフトの名門へと活躍の場を移す。

今春センバツに出場した花巻東の長距離砲が、学生アメフト界の最高峰に飛び込む。未経験ながらポテンシャル十分の八木が、進学先に選んだのは名門・関学大。「『岩手から日本一』を掲げ、達成できずに悔しいが、甲子園出場は区切りというか達成感もあった。もともとアメフトが好きで、新しいことに挑戦したい」と迷いはなかった。中学3年時に岩手県の陸上大会で、110メートル障害2位に輝き、花巻東でも身体能力の高さはトップクラス。佐々木洋監督(47)からも「適性があるのでは」と背中を押され、転向を決意した。

アメフトは体を張った激しい攻防が繰り広げられ、攻撃側はTD(タッチダウン)を目指し、守備側はそれを阻止するのが一連の流れだ。八木は「怖い部分もありますが、自分自身、ぶつかっていくことに魅力を感じ、かっこいいなと」。趣味はアメフトやラグビーの試合動画を見ること。ルールを学びつつ、プレーイメージを膨らませている。

競技転向に備え、筋力トレーニングにも力を入れてきた。野球部を引退した7月はベンチプレスで70キロを持ち上げられなかったが、地道に努力を積み重ね、今月時点で105キロを上げるまでに急成長した。

関学大は甲子園ボウルで歴代最多32度の優勝を果たしている強豪だ。「自主性を重視するチームなのが魅力的で、まだまだ自己表現が苦手なので、その部分を変えたかったし、もう1度、日本一を目指したい」と、あえて厳しい道に進む。「1日1日、食らいつき『1年生から出るんだ』という気持ちで取り組みたい」。大学3、4年時での試合出場が現実的だが、日々の練習からはい上がる。

昨秋は県大会、東北大会、明治神宮大会と主要公式戦でメンバー外も、今春センバツでベンチ入り。1回戦の市和歌山戦に「6番右翼」で先発。試合は4-5で敗れ、2打数無安打で途中交代したが「憧れの場所」という甲子園の土を踏んだ。今夏は負傷の影響でメンバーを外れたが、野球をやりきったという気持ちは強かった。

アメフトに転向するが、花巻東を背負うことに変わりはない。「自分はすごい選手でも、すごい人間でもないですが、新たな挑戦をしようと思っている人の足がかりをつくりたい」。大切にしている「貢献こそ活躍」の言葉を胸に秘め、甲子園ボウルの舞台に立ってみせる。【山田愛斗】

◆八木駿太朗(やぎ・しゅんたろう)2004年(平16)7月28日生まれ、岩手県盛岡市出身。中野小3年時に中野アップルファイターズで野球を始め、河南中では軟式野球部。花巻東では1年秋の東北大会、2年夏の県大会、3年春のセンバツ、県大会でベンチ入り。50メートル走6秒6。遠投89メートル。高校通算13本塁打。家族は両親と姉。187センチ、92キロ。血液型B。右投げ右打ち。