フィギュアスケートの全日本選手権に2度の出場を誇る籠谷歩未(22=同志社大)が、今春の大学卒業後も競技を続けると明らかにした。

1月6日に北海道苫小牧市で行われた日本学生氷上競技選手権(インカレ)に出場し、「働きながら(競技を)続けていこうと思います」と明言。仕事と競技を両立させ、3度目の全日本出場を目指す。

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もう1度、全日本の舞台に立ちたい。自分の力を出し切りたい。そう思うと、辞める決断はできなかった。

籠谷は1月6日のインカレ(フリーのみ)に出場し、100・05点で9位に入った。演技後の取材エリアで「もともと就職は決まっていたんですけど、競技を継続しようと思っています。会社にも許可をとりました。働きながら続けていこうと思います」と現役続行を表明した。優しい表情で、丁寧に説明した。

今季はずっと、競技を続けようか迷っていた。10月上旬の近畿選手権で2位となったフリー後には「この試合が最後かもしれないという気持ちで取り組んでいます」と覚悟を口にしていた。

3度目の全日本を懸けた10月下旬の西日本選手権。フリーに挑んだ籠谷は、ジャンプで回転不足などがあり、演技後は悔しそうに肩を落とした。最終的には2・65点差で全日本出場を逃した。

競技継続を決心したのはその後だった。

「言い訳みたいになってしまうかもしれないですが、西日本の時に悔しかったので、来年も続けたいなって思いました」

心に引っかかり続けた感情は、やり残したことがあるという証しだった。

昨年末の全日本選手権はテレビで観戦。籠谷と同じく、中野園子コーチから指導を受ける坂本花織(22)は2連覇を達成し、三原舞依(23=ともにシスメックス)も2位に入った。

「カオちゃん(坂本)とマイちゃん(三原)は2人とも力を出し切っていて。同じチームメートとして、仲間として、誇りに思いました。2人の熱量を感じて尊敬というか、すごいなと思いました」

2人の傍らで、横井ゆは菜(22=邦和みなとSC/中京大)や山隈太一朗(22=明治大)らの同世代のスケーターは、最後の全日本での滑走を終えた。

「同じ年代の引退する子たちも全日本で活躍している姿を見て、やっぱり自分もこの舞台に立ちたいなって思いもありました」

眺めるだけだった画面の向こうで、来季こそは躍動する。

4月からは仕事を優先しながら、勤務の合間や休日に競技に打ち込む。穏やかな口調で、今の思いを言葉にした。

「悔しさを力に変えて、レベルアップした姿を皆さんにお見せできるよう、スケートを頑張っていきたいです。新しい環境になるので不安も多いですが、自分にできることを精いっぱいやりたいです」

中野コーチからはいつも「必ず見てくれている人がいるよ」と声をかけられている。

籠谷が全日本の舞台に立つ姿を、たくさんの人が待っている。自分のためにも、ファンのためにも、リンクの上で舞い続ける。【藤塚大輔】