男子60キロ級で東京五輪金メダルの高藤直寿(30=パーク24)の2連覇がついえた。

パリ五輪代表の座を争っていた元世界ランキング1位の永山竜樹(27=SBC湘南美容クリニック)に決勝での直接対決で一本負けし、「そんなにたくさん欲張っちゃいけないなと。取るものは取ってきたし、僕の時代ってのは終わったのかなと思います」と敗北を受け入れた。

5月の世界選手権、8月の国際大会と優勝を逃し、永山の追撃を許す形で迎えた大一番だった。「ここ1年あまりいい試合できてなかったんで、今日は気持ち全面に出して、自分の子供たち、そして若い選手たちにも気迫の柔道を見せれたかなと思います」。準々決勝ではリードを許した残り10秒を切ってからの技ありで追いつき逆転勝ち。返し技の切れ味もさえ、決勝でもあと少しで有効技となる場面も作った。「最後、直接できてよかったっていう気持ちと、解放されたなって」とすがすがしく言った。

右胸に刻んだ文字も新たな駆動源だった。「ALBA」。国内規定の変更で、6月から代表道着にスポンサーなどのロゴを掲出可能となった。「今回初めて入れました」。アンバサダーを務めるeスポーツチーム「ALBA E-sports」のマークだった。

ゲーム好きが高じて就任した役割だったが、いま「eスポーツの選手を応援したい」と強く思う。大会への努力などを目の当たりにし、食事の節制などにも取り組む姿を知ると、「僕らアスリートと同じ。なので、こちらの経験で伝えられるものもある」と柔道を通じて学んだ事を伝授する意義を見いだした。

5月の世界選手権は5位、8月の国際大会では3位。代表を決めきれずに、「本当に五輪に出たいのか」と真夏に1カ月も悩んだ。東京の金メダルで頂点は取った。再びの答えを模索する中で、気づけば試合を見ている自分がいた。「本当に好き。これしかない」と原点を思い返した。「必死にやる姿をみなに見てもらいたい」。その中には、eスポーツ界の“後輩”たちの姿も思い浮かべていた。

10代で国際大会大会に出始め、最軽量級で長く時代を築いた。「やりたいこともいっぱいあります。でも、僕にとって、五輪が全てなので、それはぶれないんで、ちょっと考えます」。山あり谷ありの柔道人生の1つの区切りを迎えた。【阿部健吾】