14年ソチ、18年平昌オリンピック(五輪)を2連覇し、プロ転向した羽生結弦さん(29)の初のツアー公演が19日、横浜公演で千秋楽を迎えた。昨年11月の埼玉公演から、1月の佐賀公演をへて、17日から横浜公演を行っていた。
約2時間半、7000人の満員の観客を集めた公演後の一問一答は以下。
-千秋楽を終えて
ツアーということで回を重ねるごとに、いろんな課題が見つかったり、達成できたものが見つかったり。毎回毎回、進化すべきところが見つかっていくので、ある意味で、前半は特にですけど、競技者として戦っていくような、過去の自分をどうやって乗り越えていくのか、強くなっていくのかっていうことを常に考えながら、ほんとにストイックに自分を追い込みながら練習をしてこられた横浜公演だったなって思ってます。
-3公演走り切ってみて、心にあるのは
達成感はありますね。本当に今までの自分と比較しても、一番練習してきたんじゃないかなってちゃんと思えてますし。食事面だったり、睡眠面だったり、いろんなことにずっと気を使いながら過ごし続けた日々だったので、それがある意味、報われた1日でもありましたし。何より見てくださる方々が、ほんとにうれしそうな顔をしてくださってたんで、頑張ってよかったなって思ってます。
-これでアイスストーリーセカンドは終わりますけども、ファンはまた新しいアイスストーリーを期待してる方も多いかなと思うんですけども、構想などは
「GIFT」の時も思いましたけど、もうすっからかんなんで今。とにかく出し尽くせたなって思えるぐらい、今日もここに魂を込めて滑りを置いてきたと思いますし、何より、こうやってアイストーリーとか、アイスショーとか、そういったことをさせてくださるのは、やっぱりこうやって取材に来てくださる皆さまだったり、見てくださる皆さまだったり、それを読んだり、聞いたりしてくれる皆さまがいるからこそだと思ってるので。そういう方々に本当に感謝の気持ちを持ちながら、これからも自分なりに一生懸命頑張っていきたいなって思っています。
-あらためてテーマについて伺いたいです。もちろん一言では言えないと思いますが、教えて下さい
簡潔に言えば、日々が毎日続いていく。その中にはすごく刺激的な日々があれば、何もない、ほんとにどんよりとした暗闇、曇りの続いたような日があったり、そういう中でも生きていこうって、皆さん生きてくださいって、そんなメッセージを僕はこの中に込めてるつもりです。その中で、最終的に命っていうのは巡っていくし、でも巡っていくけれども、たった1つの、今のこの人生をちゃんと生きてほしいって。そんな祈りを込めて、このストーリーを作りました。
-ツアーの完走を踏まえてプロとしての新たな可能性、見えてきたものはありますか
アイスストーリー、改めてめちゃくちゃきついなっていうのを感じています。元々「GIFT」に関しては1回公演だったっていうこともありますし、また前半の中の最後の演目が、試合のプログラムでしたけど、ショートプログラムだったんで、まだなんとかやれてたのかな。今回、構想上、フリーとほぼ同じ状況に挑みたいっていうのを思って作ってきたんですけど、本当に大変でした。ただこうやってツアーという形で、何回も何回も挑戦をさせていただくことによって、やっと、こういう風にトレーニングしたら結果が出せるとか、手応えみたいなものをまた改めて感じてきたので。毎回毎回レベルアップできるように、自分のストーリーの中でもありますけど、経験を積んで、またより一層良い、技術的にも高い自分を見せていけるように頑張れるんじゃないかなっていう希望を持てました。
-3公演を終えて進化させられたものは
またトレーニング方法だったりとか、練習方法がまたあらためて確立されてきたのかな。
-表現面では
それはもう滑り込みあるのみっていうことと、あとは作曲者の思いであったりとか、自分がストーリーに込めたい気持ちだったりとか、また演出、照明を作ってくださってる方々の見せたい思いとか気持ちとか、そういったものはなんだろうっていうことをすごく考えながら、またその回数を重ねるごとになんか感じながら滑れたのが大きかったのかなとは思います。
-この1カ月ですけど、どうしてそこまで自分を追い込めたんですか
例えばなんですけど、朝起きて1時間ストレッチとトレーニングして、練習行って、3時間トレーニングとスケートして、帰ってきて1時間半トレーニングして、寝る前に1時間イメトレしてみたいな日々をずっと繰り返してたんで。かなり試合やってる時よりも練習したり、イメトレをしたりしてきました。でも、それは本当にいいものを見せたいって思ったのと同時に、自分の実力が自分が見せたいものよりも圧倒的に劣ってるっていうことを改めて感じたので。まだまだ進化し続けたいなって思ってます。
-「破滅への使者」今日はノーミスしましたね
試合みたいな感想になっちゃうんですけど、「やっと練習報われた」と思いました。本当に毎日3回通して3回ともノーミスしてみたいなことを毎日やってるんですけど。前半全てを通し切りながら、毎回映像の部分はひたすら着替えて靴を履いてみたいなことをずっと繰り返して、握力とかもなくなっていく中で滑るのとは全く違ってて。でもこういった中でノーミスできたことは、また改めて自分がやってきたことが正しかったんだって思える瞬間でもありました。
-この物語の中にはたくさんのメタファーが入ってると思うんですけれども、水が重要な役割になってますね
命の根源みたいなイメージがあって。生命が誕生する時に水の中から生まれてくるっていうイメージが自分の中では強くあって。水があるからこそ、植物ができたり、自分たち哺乳類ができたり、そういった進化の過程の中の根源っていうもので。命の象徴として、水みたいなものを使っていました。
-木のイメージは
例えば人生みたいなものが木の芽から始まってきたとしたら、それがだんだん分かれていって、いろんな方向に進んでいく。でも、その根源を探してみたら、みんな1つの、生まれたての、本当に何もない自分でしかなくて。そこからいろんな道に分かれてって、いろんなことをやっていくって、そこで枝が折れちゃったりするけれども、だけれども、そこから歩いていけば、なんとかなるんじゃないかなみたいなことを、MIKIKO先生といろんなイメージを共有しながら作っていたつもりです。
-あいさつの時に「寂しいな」とおっしゃいました
自分の中で、割と今日完結できたなっていうぐらいの達成感があったので。皆さんにとってはイメージがしづらいかもしれないですけど、ある意味、自分の中でオリンピック取ったなぐらいの勢いで、めちゃくちゃ練習してこれたことが達成できたので。達成できたからこそうれしいし、うれしいとともにその寂しさが一緒に募ってきたっていうか。達成してしまったみたいな感覚で寂しいなってちょっと思いました。でもまだまだこれから構成上げられると思いますし、もっと強くなれると思うんで、もっと練習しますって感じです。
-佐賀公演が終わってから追い込まれたんですね
佐賀があまりにも自分の中で悔しくて。スケカナで惨敗したみたいな(笑い)グランプリ恒例の1戦目ボロボロみたいな。そんな感じで。また一生懸命頑張ります。