ラグビーの全国大学選手権が24日、福岡・ミクニワールドスタジアム北九州で開幕する。北海道勢で初めて出場する北大(東北・北海道代表)は、1回戦で26度目出場の福岡工大(九州代表)と対戦する。部員の多くは高校時代、全国舞台とは縁がなかった無名集団。創部95年目。恵まれない環境の中で創意工夫した練習と、徹底した分析力でつかんだ初代表。北の大地の“知能派”ラガーマンが夢舞台にトライする。

寒風吹きすさぶ大学構内の一角。全国初出場を控える北大フィフティーンは、泥だらけになりながら汗を流している。部員54人を束ねる伊藤智将主将(4年)は「緊張感も増してきましたが、ワクワクしてます。今年は雪がまだ降ってなくて良かった。良い兆しです」。明日22日の出発を控え最終調整に入った。

練習場は他部と共用。水はけが悪くデコボコなうえ、農場隣接のため、動物の生態系を考慮して電灯設備を設置できない。週4日の練習は1日約2時間のみ。恵まれない環境は、旧帝大の頭脳でカバーした。

佐藤亘副主将(4年)は「練習は短時間で息の上がるようなメニューを意識している」。試合に直結する切り返しの多いランメニューで足腰を重点的に鍛える。グラウンドを離れても「各自が動画を見て研究し、議論を交わす」と、対戦校の個別プレー対策に時間を費やす。FW陣の平均体重は85キロを下回る。全国的に見れば軽量級の布陣で「小さいなりにスピードと低さを磨き、分析にも力を入れてきた」と佐藤。相手の特長を消し、守備からリズムを作るチームを築き上げた。

今月4日、全国出場権をかけた東北学院大(宮城)との代表決定戦は、前半7-12の劣勢で折り返した。後半20分、同27分にCTB岩田華依(3年)が連続トライを決め、逆転勝ちした。佐藤は「ラインアウトの対策が一番生きた。守備で耐えて、攻撃ではボールを長くキープできた」。研究成果が結実し、13年から5年連続で涙をのんできた代表決定戦を制した。

創部95年目。伊藤は「悔しい思いをしてきた先輩たちの思いに応えられた。いろいろな人に応援していただいている」と気持ちを新たにしている。全国出場が決まり、北九州在住OBから福岡工大の直近3試合の映像を提供された。花園出場など高校時代に実績のある選手はごく少数。道勢初の全国選手権に臨む伊藤は「北大らしい前に出るディフェンスで勝ちに行きたい」。伝統を背負い、福岡に乗り込む。【浅水友輝】

◆北大ラグビー部 1924年(大13)創部。現在は選手49人、マネジャー5人の54人で活動。函館にキャンパスがある水産学部を含め、全学部全学科の学生が所属している。活動は部長を務める同部OB西村裕一准教授とOBで構成されるクラブ「北菱クラブ」のサポートを受けているが、練習メニューの決定、チーム運営などは主に学生主体で行われている。

◆ラグビー全国大学選手権 1964年(昭39)度に関東・関西の4校で第1回が開催。55回目の今季は、各地区リーグ戦を突破した14校が出場。北海道勢は93年度から道インカレ1部リーグ覇者が地区間代表決定戦に参戦。現行システムは12年度から。11年度までは東北代表に勝利した上で、関東代表を破る必要があり、10年度の北大は東北代表を下したが、関東代表に敗れ全国出場は果たせなかった。