天理大が10トライの猛攻で7戦全勝とし、3年連続10度目の優勝を果たした。

前半は14-12と互角の展開だったが、後半4分にCTBシオサイア・フィフィタ(2年=日本航空石川)が主導権を握るトライ。同19分から7トライを重ね、フッカー島根一磨主将(4年=天理)は「関西リーグ3連覇を達成できてうれしい。関西代表として1戦1戦を戦って、目標の日本一に向けて頑張りたい」と全国大学選手権を見据えた。

11月中旬、肌寒い奈良・天理市のグラウンドで、小松節夫監督は少し困ったような表情を浮かべた。

「今年のチームなあ…。『例年より元気があるか』っていえば特別そうでもないし、『逆にそうじゃないのか』といえば、それも違う。例年のチームと比べた特徴…。難しいな…」

夏合宿から小柄なFWに対してラインアウトを重点的に落とし込むなど、技術や戦術面の強化は年ごとに異なる。一方、チームづくりにおいて、特別な改革を行った訳でもない。1試合平均68得点と圧倒的な3連覇の要因を、指揮官は「毎年の積み重ねかな」と分析する。

監督自らが外国人留学生を含めた選手と寮生活を共にし、学生リーダーたちが中心となって、学業とラグビーを両立する。11年度には日本代表経験を持つOBの立川理道(28=クボタ)らを中心に、全国大学選手権準優勝。決勝で結果的に3連覇を果たす帝京大に立ち向かい、12-15と迫った。そんな先輩たちに憧れ、天理大を志す高校生が増えたという。

「昔は何となく天理にやって来て『こんなはずじゃなかった…』という子が、必ず数人はいた。でも、今は『天理で俺はこうなりたい』といった思いを持って、入部してきてくれる。『こんなはずじゃない』は無くなっていると思います」

この日、前半11分に先制トライを挙げるなど、攻守で躍動したフランカー岡山仙治(3年=石見智翠館)は身長168センチ。小さくも熱い男は、隣で取材を受ける身長175センチ、体重100キロの島根について、こう明かした。

「島根さんって穏やかですけれど、本当に負けず嫌いなんです。FWで800メートルを走る練習なんかでは、フロントロー(第1列)なのに2位になる。僕が勝ったら、次に走る時は、キョロキョロとこっちを見てきますから。でもフロントローがそれだけ走ると、他のFWの選手も『負けられない』となる。本当に努力家で、尊敬する先輩です」

特別新しいルールを作らなくても、チーム内には毎年違った刺激がある。3人同時出場が可能になった外国人留学生に注目が集まるが、それだけではない地道なチーム作りが実を結び、好サイクルとなっている。

3連覇を控えめに喜んだ島根はキッパリと言った。

「大学選手権があるから、あまり喜べない。日本一で本当に喜びたい」

準々決勝(12月22日、大阪・金鳥スタ)から登場する全国大学選手権では、初戦で関東リーグ戦2位-同対抗戦5位の勝者とぶつかる。勝負は1カ月後。岡山は「ここで気持ちを切って、1日でも無駄にしたら勝てない。完成した天理のラグビーを見せたい」。本当の戦いはここからだ。【松本航】