ラグビーワールドカップ(W杯)の熱気が日本中を吹き抜けた中、毎週日曜日は「ラグビー流 Education」です。高校ラグビーの名門・桐蔭学園(神奈川)を率いる藤原秀之監督(51)に、「世代別の指導ポイント」第2弾として、中学生を対象にした話をうかがいます。

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中学生時代は身体能力や体格の成長に個人差が出やすい時期。だからこそ「その子に合った指導が大切」と藤原氏は言う。全体指導と個人指導を使い分ける。同時に精神的な個人差も大きい。いわゆる「思春期」「反抗期」だ。そこへの対処法の鍵は?

藤原 大人が自分で話すより、相手の話を「聞く」ことでしょう。相手が話しやすい状態をつくる。こちらが9割話したら、相手は聞く耳も持たないし、自分の話もしない。8~9割聞き役に回ること。

親子だと、親の感情から頭ごなしになったり、子供の言葉を詰まらせてしまうことも起きがちだ。

藤原 すると、その子が何を考えているのかわからないままになる。ただのおっさん、お兄さんみたいに「ふ~ん、そうなんだ。なるほどね。それで?」と、大人側が演技をすることも必要かもしれません。

その子が何を考え、何を望んでいるかを聞き出す、引き出すということ。

藤原 さらに自分の目標に対して、何をしたらいいのか、考えさせることができたら、素晴らしいと思います。答えは本人にしかない。安易に「こうしたら?」と助言を与えるのは、誘導に近くなる。自分の意志でやらないと、仮にうまくいかなくなった時に「ほら、違った」と反発につながる場合もあります。

大人にはまだ「守ってあげたい」対象かもしれないが、もう「1人の人間」として接する時期のようだ。

◆藤原秀之(ふじわら・ひでゆき)1968年(昭43)東京生まれ。大東大第一高でラグビーを始め、85年度全国選手権でWTBとして優勝。日体大に進む。卒業後の90年に桐蔭学園高で保健体育の教員、ラグビー部のコーチとなり、02年から監督に。同部は昨年度まで全国選手権17度出場。決勝進出6回、10年度優勝時のメンバーに日本代表の松島幸太朗ら。今や「東の横綱」と呼ばれている。