前頭栃乃若(26=春日野)が16日、引退会見を行った。日本相撲協会には15日に引退届を提出していた。

 はかま姿で登場した栃乃若は「ギリギリまで悩みましたが、応援してくれる皆様の期待に応えられなかった。この歳でふがいない相撲を見せた自分に対して、これからも頑張ろうという気力を保つことができなくなった。突発的に見えるかもしれませんが、今までのふがいなさは、すでに限界を超えていました」と理由を説明した。約2年前から引退を考え始め、両親にも相談したという。後悔はないかと問われると、少しだけ間を置いて「はい」と力強く返した。

 冬巡業から帰った翌日に話を聞いたという師匠の春日野親方(元関脇栃乃和歌)は「青天のへきれきというか…びっくりした」と驚きを隠せなかった。中学の頃から勧誘を続け、入門させた逸材。「部屋を選んでくれたときは、踊り出したいぐらいの気持ちだった。部屋だけでなく、角界を代表する力士にしなければと、これはふんどしを引き締めてやらんといかんなと思っていた」と当時の胸中を明かした。

 一方で、その期待のあまり、師弟関係にズレが生じた。変則的な相撲を取る栃乃若に対し、春日野親方は「うちの部屋は押しが基本。角界を代表する力士に、跳んだり跳ねたりさせたくなかった」と、基本からたたき込んだ。それが仇となった。「後から聞いた話だが、好きなように相撲を取らせてほしかったと言っていた。いろんな疑問、苦労が彼の中にはあった。それに気づいてあげられなかった私がふがいない。今でも反省している」と話した。

 4時間にも及ぶ話し合いで説得したが「頑固な子ですから。1度決めたら変わらない」(春日野親方)。今後について、栃乃若は「今はそこまで考える余裕がない」としながらも、「ここで学んだことを、次の世界で生かしたいと思います」と、最後は深々とお辞儀して7年間の力士人生に幕を下ろした。