番付発表より問題究明を優先する。日本相撲協会の特別調査委員会は26日、東京・両国国技館で会見し、陸奥生活指導部長(51=元大関霧島)が、28日に予定していた名古屋場所(7月11日初日)の番付発表を延期すると発表した。賭博問題を受けて、同日に都内で緊急の理事会と評議員会を行うため、理事らの承認を得て延期が決まった。場所前恒例行事の番付発表が延期されるのは戦後初で、代替え日時も未定。

 新3役や新入幕が予想される力士にとって、心待ちにしていたはずの晴れ舞台が延期された。特別調査委員会の会見に同席した陸奥親方が「28日に理事会ならびに評議員会を開催する関係で、番付発表を延期させていただきます」と発表した。場所を盛り上げるための最初の重要行事が、賭博問題の解決、さらには名古屋場所の開催そのものを議論するため、代替え日時不明のまま延期となる異常事態となった。

 相撲協会によると、番付発表の延期は戦後初だという。江戸時代の1855年(安政2)に大地震で、明治時代などは当時の横綱の体調不良を考慮して延期となった例はあるが、幕内の新昇進者の会見を行うなど、戦後は番付発表が場所前の重要行事として定着していた。陸奥親方は「28日に番付発表は無理だと判断した」と、薬物問題、力士暴行死事件など近年の不祥事でもなかった選択をした経緯を説明した。

 延期は特別調査委員会の指示ではなく、相撲協会が独自に判断して決めた。この日、各理事に電話で連絡が入り、了承された。すでに番付は40~50万枚ほど刷り上がっているという。初日を1週間後に控えた7月4日にも臨時理事会が行われ、そこで名古屋場所を開催するかどうかを判断する予定。野球賭博で幕内力士に多数の出場停止が出た場合などは、名古屋場所中止の世論が高まることは必至。6月中に中止の判断が下れば、幻の番付となる可能性もある。

 陸奥親方は「経験したことがないので、大変責任も感じていますし、協会全体で大きなことと感じている」と神妙に話した。