大相撲の大関琴奨菊(29=佐渡ケ嶽)が12日、婚約解消を発表した。昨年10月、佐賀県在住の会社員との婚約を発表していたが、その後に互いの考えに違いが生じたという。婚姻届も提出しないまま、4月20日に予定した挙式も中止。招待客にはわび状を送付した。ファンや支援者に謝罪しつつ、当面は相撲に集中する姿勢を示した。

 12日の稽古後、千葉・松戸市の佐渡ケ嶽部屋で、琴奨菊は集まった報道陣に対応した。着物に着替え「婚約解消になったご報告をします」と切り出した。

 解消となった理由については「(婚約の)発表後から人生観のずれが大きくなりました。たくさんの方々に(披露宴の)招待状を送った中、こうなってしまって申し訳ないです」と話した。具体的な要因については「2人でいろいろ話し合った結果。相手もあることなので、迷惑をかけたくない」とだけ言った。

 婚約を発表したのは、昨年10月29日。九州場所の佐渡ケ嶽部屋宿舎で2人そろって会見した。佐賀と千葉での遠距離ながら、約3年の交際を経て婚約に至った。婚姻届の提出は、当時は九州場所後の見通しだったが延期。今年1月30日の琴奨菊の誕生日にも予定していたが、結局は破局に至ってしまった。

 関係者によると遠距離による擦れ違いに加え、将来に対する考え方の違いもあったとみられる。引退後、親方として日本相撲協会に残り、部屋を持てば妻は大勢の力士にとってのおかみさんになる可能性がある。「(婚約者は)不安になったかもしれない」と指摘する関係者もいる。佐渡ケ嶽親方(元関脇琴ノ若)は「性格の不一致ですかね」と話した。

 4月20日に都内のホテルで予定した披露宴はキャンセルし、先週末に招待者へのわび状も送った。琴奨菊の地元、福岡・柳川市でも6月に披露宴を行うはずだったが、中止になった。

 琴奨菊によると、決断は「初場所が終わって1週間したくらい。2人で話し合って、こういう結果で残念です」とした。今月初旬、仲人を依頼していた地元の恩師とともに、婚約者の実家を訪れ、円満に話し合いを終えたという。

 九州場所は8勝7敗でかど番を脱出したが、1月の初場所も千秋楽にようやく勝ち越し。「相撲は相撲、私生活は私生活で考えた」と土俵への影響は否定したが、苦戦は続く。「こうなって残念ですけど、より一層精進して、相撲に勝つことで応援してくれる人に恩返ししたい」と春場所(3月10日初日、大阪・ボディメーカーコロシアム)に目を向けた。

 ◆琴奨菊和弘(ことしょうぎく・かずひろ)本名・菊次一弘(きくつぎ・かずひろ)。1984年(昭59)1月30日生まれ。福岡県柳川市出身。明徳義塾中で中学横綱、同高で国体など7タイトルを獲得した。02年初場所で初土俵。11年秋場所後に大関昇進を決めた。得意は左四つ、寄り。178センチ、178キロ。