<福岡6大学野球:九共大0-1福経大>◇9日◇九共大

 プロ注目の左腕、九共大の山内晴貴(4年=沖縄水産)が無念の敗戦投手となった。ノーヒットノーランを継続して9回を投げ切ったが援護がなく、10回1死から3安打を許して1失点。0-1で敗れ、今季初黒星を喫した。先月の九工大戦でノーヒットノーランを達成しており、リーグ史上初となる3度目を狙ったが、味方打線が沈黙して快挙達成はならなかった。

 3度目のノーヒットノーラン、さらにシーズン2度目というリーグ初の大記録が逃げていった。山内は9回を無安打無得点に抑えながら、敗戦投手となった。「これでナイスピッチングと言われてもうれしくないです」。怒りがエースの顔に浮かんでいた。

 味方の援護がないままの孤軍奮闘だった。初回から制球重視で丁寧に投げ続けた。直球は最速140キロだったが、スライダーを使って緩急をつけた投球で5回まで完全ペース。四球を出して「記録」は切れたが、9回まで11三振を奪って完ぺきに抑え込んだ。だが、0-0で迎えた延長10回、1死から右中間を破る二塁打で初安打を許す。1死一、三塁から敬遠で満塁策を取ったが、最後は中前へ安打を許して今季初黒星。「9回が終わってからはノーヒットノーランはもういいと思った」。個人記録より勝利を優先したが、打線は応えてくれなかった。

 山内の登板日はなぜか打線が沈黙する。開幕戦は最終回に1点を入れてサヨナラ勝ち。ほとんどが終盤の得点で勝利を決める苦しい展開ばかりだ。「みんな自分に頼りすぎ。僕はチームとして勝ちたいのに、山内で勝っているというムードなんです」とエースにかかる比重の大きさを感じている。持病の首痛を抱えて疲労蓄積で「ずっと肩が張っている状態」と治療を受けながらの投球が続く。

 前日は亜大の東浜が3連続完封を記録。同じ沖縄出身の先輩として、東浜に負けない記録を作りたかった。「野球は難しいです。ノーヒットに抑えても負けるなんて」と山内。それでも再び神宮のマウンドに立つために、エースは勝利を目指して投げ続ける。【前田泰子】