1軍で3試合に先発出場した。昨年11月には台湾で行われた「21U-W杯」の日本代表に選ばれ、全8試合すべてに先発出場した。武田健吾外野手(21)、プロ入り3年目。素晴らしいセンスの持ち主で、身体能力は抜群。元阪神-メジャーリーグ-日本ハムで活躍した新庄2世の前評判で、福岡・自由ケ丘からオリックス入り。入団当時の監督だった弓岡敬二郎氏が「見ていて下さい。いい動きをしていますねえ。楽しみな選手ですよ」と早々に絶賛したほどだ。1年目、2年目と着実に力をつけ、攻守とも順調にレベルアップしていた。私の目には、間違いなく今季の若手成長株ナンバーワンと映っていたが、いざ、フタを開けてみると、どうも調子が上がってこない。
つい先日の鳴尾浜球場での阪神戦。9回土壇場。1軍のリリーバーとして活躍していた渡辺から放った、見事な逆転満塁ホームラン。無駄なところに全く力がはいっていない。野球選手なら誰も目指す理想のフォーム。打った瞬間それとわかった文句無しの1発。この時点で順調に成長している武田をイメージして見ていたが、確認のため今季のウエスタン・リーグの個人成績に目を通してみるとなんと、打率は2割1分台。目の前でみたバッティングフォーム、私が抱いていた武田の実力と、現実の成績にあまりのギャップがあり過ぎた。原因を追求してしてみることにした。
「体調はどうなの…。どこか悪いところでもあるの…」。本人に聞いてみると「いや。別に悪いところなどありません」の返事。確かに動きを見ていても、故障しているような感じはない。あくる日は雨で試合は中止となったが、その翌日のゲームで武田に注目した。やはりおかしい。いつになくボール球によく手を出している。それも微妙なコースの球ではなく、完全なボール球に泳がされて空を切っている。バッターが悩んでいる時の状態だ。佐藤バッティングコーチに聞いてみると「体は別にわるいところはありません。こちらから注文を出している面もありますので。少々悩んでいるかもしれません。注文している部分ですか…。まあ、それは…」と、にごされてしまったが、企業秘密はあって当然か。
さて、武田の成績を追ってみた。
1年目 97試合出場、325打数82安打、打率2割5分2厘、打撃成績14位。
2年目 85試合出場、311打数89安打、打率2割8分6厘。打撃成績8位。
ファームの成績とはいえ、高校卒業後、ルーキーイヤーから規定打席に達して残したこの結果は立派だ。
今季はどうか。6月15日現在、44試合に出場し155打数32安打、打率2割6厘。一向に調子があがってこないようだ。焦ったら逆効果になるのは間違いないと本塁打を打った日、こんな話も出た。
「見ていて、いいホームランでしたか」と武田に逆取材された。どん底状態で、もがき苦しんでいるのがよくわかる。ワラにもすがりたい心境なのだろう。私が見て感じた通り「打った瞬間ホームランとわかったよ。無駄な力の抜けた理想のフォームだった」と率直に伝えてあげた。武田はやっと笑顔をのぞかせ「これがきっかけになってくれたらなあ」と話した。その姿は、苦しみもがいている自分への暗示のようにも聞こえた。
不振脱出には、まず原因の究明を心掛けること。原因がどうしてもわからない場合は、基本に戻って思い切り汗を流すこと。また、行き詰まって努力するときは、方法を変えてみるのもいい。いろいろ工夫して練習することで新たな発想が生まれるかもしれない。 「いま、打ちたい、打ちたいという気持ちがすごく強いんです。だから、どうしても上体が前に突っ込んでしまうんです。すべてが悪循環になってしまって…。でもこんなこと言ってる場合ではありません。とにかく頑張ります。練習を積み重ねていきます」(武田)
原因は分かっているようだが、分かっていてもなかなか元に戻らないのが野球の技術。打開策とは。先輩の経験からシンプルに言わせてもらえるなら、やはり基本に戻ることではないだろうか。ただ、このトンネルを抜けた先には、技術、精神面での大きな成長が待っている。だからこそ大いに苦しみ、そして、何かをつかんで戻ってきてほしい。



