世の中変わったなあ~、と思うのは、日本ハムの大谷翔平を巡るニュースです。来シーズンが終わった後、球団が入札制にかけることを容認するという。

 これで事実上、大谷は18年から大リーグでプレーできるわけです。

 日本球界最大にして唯一の大スターともいえる、あの大谷が日本球界を去るという、そんなことが実質的に決まっても、まあ、そんなもんだろうというムードに支配されている。

 オリックス時代のイチローが大リーグを志望していることが明らかになってから、球界、メディアが大騒ぎする渦中にいた私にとっては、えらい違いだなあ、というのが感想です。

 大リーグでプレーする選手が増えたいまや、このムードは当然だし、いいとも悪いとも言えませんが、自他とも「時代遅れ」と認める私にとっては少し寂しい気がしています。

 こんな話題が大騒ぎされない昨今、球界のニュース、特に阪神のネタは、虎党だらけの関西においても、あまり話題にならないのです。そんな中、ちょっと注目しているのが糸井獲得を巡る人的補償の話題です。

 細かいルールはもはや言うまでもありませんが、念のため、ざっくりと言えばFAで獲得した球団側(今回は阪神)に対し、流出させた球団(今回はオリックス)が、だれか選手をもらえるというもの。金銭を払うことだけで済ませることも可能ですが。

 オリックスからFA宣言した糸井をとった阪神側は「この選手たちは出せない」ということでプロテクト、つまり保護するわけですが、それは28人までと決まっており、それ以外の選手なら、基本的にどの選手を獲得してもいいわけです。

 一体、だれが移籍するのか。両球団だけでなく、野球ファンの間ではちょっとした話のネタでしょう。先日、阪神で少し面白いというと失礼ですが、ニヤリとしてしまう話を聞きました。

 台湾のウインターリーグに参加していた金村投手コーチと甲子園で話したときのこと。同じベンチにいたコーチの視線にヒヤヒヤした! というのです。

 このウインター・リーグはNPBのファームであるウエスタン・リーグ、イースタン・リーグでそれぞれ代表チームをつくっており、コーチもそれぞれ、参加します。金村コーチが行っていたときに、同じウエスタン代表のベンチには、オリックスでこのオフから1軍担当になった平井投手コーチがいたのです。

 「向こう(台湾)で石崎とか横山とかウチの投手がすごくよかったからね。平井さんの目が光っているような気がして…」

 選手を取る側のオリックスから来ている平井コーチが、選手を見定めているような気がして仕方がなかったというわけです。

 ウインター・リーグまで行かせる選手をプロテクトしていないということは考えにくいですが、人数的な問題で、必ずしも保護しているとは言えない。

 何も聞かされていない金村コーチにしては気が気でなかったということです。現場の指導者もいろいろと気を使ってるんやなあ、と納得する瞬間でした。

 FAの人的補償に関しては過去にいろいろなドラマが起こっています。でも冒頭に書いたようにすっかりドライになってきたいまの世の中、それこそ実質的なトレードと考えてもいいのでは、と思います。

 虎党の方々には申し訳ないけれど、ヤジ馬的、いや個人的には「大山鳴動してネズミ1匹」とばかり、金銭だけで終わるのはおもしろくないなあと思っています。