常葉学園菊川が全国高校野球静岡大会を制し、3年ぶり5度目の夏の甲子園出場を決めてから一夜明けた28日、同校の森下知幸監督(55)が、今月31日をもって退任することを選手の前で発表した。甲子園には帯同せず、高橋利和副部長が新監督として指揮を執る。

 理由は8月から御殿場西の監督に就任するためで、選手が動揺する中、森下監督は言った。

 「なかなか言えずに申しわけない。有終の美を飾れて良かった。みんな成長したと思う。高橋監督の下、甲子園でも暴れて来てほしい」

 取材には、「昨日は胴上げされていても、複雑な思いでした。後進に道を譲りたかったのと、自宅のある(静岡の)東部地区に戻りたかった」などと話した。私立の御殿場西は、92年のセンバツに出場。今夏の静岡大会では3回戦で浜松開誠館に敗れている。

 だが、地方大会を勝ち抜いたチームの監督が、甲子園大会を前に交代するのは、春夏を通じても異例だ。主砲でプロ注目の栗原健外野手(3年)は前日に「入学した時から森下監督を日本一にすると決めてました」と話しており、ショックを受けて涙を流していた。

 森下監督は1978年(昭53)にセンバツで初優勝した浜松商の主将で、卒業後、中部電力に入社し、社会人野球で活躍した。81年、母校の浜松商コーチに就任。日大三島の監督を経て、02年から常葉学園菊川の事務職員となり、コーチに就任した。06年8月、監督に就任。翌07年、センバツ出場を果たし、エース田中健二朗投手(26=DeNA)らを擁して全国制覇に導いた。

 当時、指導方針「バントなしのフルスイング」が話題になり、その精神は現チームにも引き継がれている。甲子園では07年夏(ベスト4)、08年春、13年春、夏にも指揮。同校は、森下監督が謹慎中だった08年夏の甲子園大会では準優勝を飾っている。