東邦(愛知)は土壇場の9回裏に一挙5点を奪い、10-9で八戸学院光星(青森)にサヨナラ勝ちした。

 金メダル級の大仕事をやってのけたのは、連日盛り上がる五輪開催地と同じ名前の「リオ」だった。9回、9-9の同点としてなお2死二塁。東邦の8番鈴木理央は外角のスライダーに食らいついた。「狙っていました! ワクワクして打てる気しかしなかった」。

 ボールが左翼芝生を弾むと、二塁走者高木が全力で本塁へ滑り込んだ。一塁側ベンチから跳びはねてナインが本塁に集まった。9回に6安打5得点、終盤7回からは7点差をひっくり返す大逆転サヨナラだ。

 森田泰弘監督(57)も「長いこと野球の指導をしていますが、なかなかこういうゲームに遭遇したことはない。鳥肌が立って涙が出ました」と声を震わせた。

 プロ注目の藤嶋ばかりが話題に上る。鈴木は「チームがこれまでも支え合って来たので、この盛り上がりにつながった。藤嶋だけじゃないぞというところを見せることができた」とうれしそうに笑った。

 両親の願い通りにもなった。理央という名前には「理性を持って集団の中心的存在になってほしい」という思いが詰まっている。父昭二さん(50)が大会前に話した「今年、リオでオリンピックがあるから持ってるかもしれないぞ」との予言通りになった。【桝井聡】

 ▼東邦が逆転サヨナラ勝ちした。甲子園の逆転サヨナラ試合で4点差は史上最大差。過去は04年春の済美、06年夏の智弁和歌山が記録している。前回の06年智弁和歌山は帝京投手陣が乱れ、9回裏に2安打ながら6四死球を絡め5点を挙げた。今回の東邦は、四死球なしの6安打を集中する素晴らしい攻撃で打ち勝った。

 この試合は7点差逆転勝ちでもある。97年夏の市船橋(対文徳)14年夏の大垣日大(対藤代)が最大差となる8点差逆転勝ちを記録しているが、ともに序盤から差を詰めた。7回以降の7点差は50年夏の浜松商(対別府一)76年春の習志野(対大社)93年夏の徳島商(対久慈商)に並び、終盤の反撃では最大得点差になる。【織田健途】