<高校野球春季岩手県大会:花巻東10-0盛岡一>◇24日◇準決勝◇岩手県営野球場

 花巻東が4年連続6度目の決勝進出を決めた。2年生エース大谷翔平が、公式戦自己最速タイの147キロを3度マークし、6回(コールド)5安打10奪三振の快投。191センチの長身から繰り出す迫力十分の速球に「怪物誕生」の予感が漂った。

 191センチの長身から振り下ろす右腕の指先は、自身の背番号に達するほどしなり、体に巻きついた。初回先頭打者への2球目で147キロを計測。昨秋の東北大会以来となる公式戦最速タイ。4回にも2度、同じ球速をマークした。4月29日の練習試合・聖光学院(福島)戦では、自校のスピードガンが151キロを表示。「力を入れず、コントロールを意識して低めに集めました」。控えめな笑顔が余力十分を物語る。

 圧巻は4回。連打と四球で迎えた無死満塁で、配球をガラリと変える。常時140キロ台の直球を見せ球にスライダーで勝負し、盛岡一の6番中村拓、7番千葉貴を連続三振。8番小野も三ゴロに打ち取り、難なく無失点で切り抜けた。

 まだ2年春。それでも19日の盛岡大付戦をプロ6球団が視察した。「今年でもドラフト上位候補」。スカウトたちは口をそろえた。09年の甲子園で花巻東を春準V、夏4強に導いた西武菊池雄星以上、の声が上がっている。

 恵まれた長身、強い地肩、柔軟性は両親から受け継いだ。182センチの父徹さん(49)は、社会人野球の三菱重工横浜で7年間プレーした強肩外野手。170センチの母加代子さん(48)はバドミントンで国体出場経験がある。大谷は「バドミントンはラケットを真上から振らないと打てない。投球のテークバックに似ている」。小学2年まで母と打ち合った経験が柔軟さにつながっている。

 徹さんは「中学入学時に167センチだった身長は、無理なく伸びて高校入学時に188センチになった」。東北ゆかりの長身エースといえば、東北高出身の日本ハム・ダルビッシュ(196センチ)と楽天岩隈(190センチ)。「2人の映像を参考にしています」と大谷。高校入学からまだ1年強と末恐ろしい。みちのくから、再び怪物が躍り出る日も遠くない。【木下淳】