<高校野球山梨大会:東海大甲府3-1富士学苑>◇10日◇2回戦

 東海大甲府の「70発男」は警戒された。富士学苑との初戦。高橋周平内野手(3年)の第1打席は敬遠気味の四球。続く3回も目いっぱいの外角ばかり攻められた。それでも「あえて自分でストライクゾーンを広げて」高いボール球を逆方向へたたきつけた。痛烈な左前打で出塁すると、盗塁を絡めて生還。7回もボール球を右前打にした。歩かされても、変化球ばかりでも、無心に役割に徹した。

 「言い訳にしちゃいけないけど、夏はやっぱ違いますね」。独特の緊張感の中でも3打数2安打だ。ネット裏には国内7球団14人のスカウトが集まった。ドラフト1位候補に挙げるヤクルトは3人で視察。渡辺編成部部長は「ストライクは少ないのに2安打。プロでショートもできるんじゃないかな。足もある」とあらためてほれ直した様子だ。

 昨夏敗れた因縁の相手を下した。「道具は大事にするタイプ」という高橋だが、実は春からバットを替えていた。「銀色だと優勝できなさそうってコーチに言われて」と、金色にした。アンダーシャツの下には「夢」と縫い付けられた母玉寄さん(47)手作りのお守りも忍ばせた。「みんなに応援されて、これだけ取材されて、結果が出ないと情けないですから」。高橋の快進撃は、ここから始まる。【鎌田良美】