<高校野球春季宮城大会:仙台育英9-0仙台商>◇27日◇準決勝◇Kスタ宮城

 宮城では仙台育英のドラフト候補・上林誠知外野手(3年)が、兄の誕生日を祝う「Kスタ1号」で復調をアピールした。チームも仙台商を無安打に抑える7回コールド勝ちで5大会連続28度目の東北大会出場を決めた。

 予告通りの1発だった。初回2死一塁で左打席に立つと、2球目の内角高め直球を捉える。高く舞い上がった打球は、今季新設された「Eウィング」を越え、右翼席に飛び込む高校通算14号。プロ注目の主砲は「Kスタで1本打ちたかった。5月30日が兄の誕生日で(今日)見に来るというので『打ってやるから』と電話で言ったんです」。高校時代は大宮東(埼玉)の外野手で、現在は東京・原宿のアパレルショップに勤務する泰源さん(20)にホームランボールをプレゼントした。

 久々の感触だった。センバツ後に左足首を痛めて地区大会を欠場。土踏まずがなくなる扁平(へんぺい)足のような状態でアキレスけんが固まっていると診断され、現在も電気やハリで治療を続ける。足の形状を戻すためのシューズの中敷きも作って回復に努めてきた。前日26日にスタメンに復帰し、この日も初回に左中間への飛球をランニングキャッチ。その裏にセンバツ直前の智弁和歌山との練習試合以来、約2カ月ぶりの本塁打が飛び出した。完全復活かと思われたが「その後(の3打席)は凡退したし、後半に(左足が)気になり始めた」と大事をとって6回で交代。打席を見れば好不調がわかるという兄も「ファウルの角度も良くないし、難しい球に手を出している」と心配そうだった。

 センバツも甲子園で観戦し、頻繁に連絡を取り合ってアドバイスも送ってもらう兄は一番の理解者だ。上林は「誕生日プレゼントには少し早かったけど、打ててよかった」と喜んだ。今日の決勝戦も、兄が見守る中でもうひと仕事してみせる。【鹿野雄太】