<高校野球秋季北海道大会:札幌静修7-3札幌東>◇16日◇札幌地区Cブロック3回戦◇札幌麻生

 1年生ながら“野球脳”は抜群だ。札幌地区で札幌静修の熊谷陸二塁手が、3安打2打点に3盗塁と大暴れ。瞬時の判断で勝ち越しの適時二塁打に三塁打と長打を生み出し、札幌東を退けて代表決定戦進出を決め、2年連続全道出場に王手をかけた。今日17日には、札幌地区4代表が決定する。

 とにかく、塁に出ると騒がしい。雷雨のため1時間12分に及んだ長期中断も、札幌静修の背番号4には関係なかった。今秋、初めてベンチ入りしたリードオフマン熊谷の野球センスが、随所で光った。

 まさに独壇場だった。2回、2-2と追い付き、なお2死三塁。熊谷の打球は、中堅へのポテンヒットだった。「ただ、隙を狙っていただけ」。ぽっかり空いた二塁ベースを視界にとらえると、迷わず一塁を蹴った。平凡な当たりは、勝ち越しの適時二塁打に。4点目の適時左前打を放った7回も、すかさず二盗を決めて、右飛と暴投で追加点のホームを踏んだ。

 3安打2打点に3盗塁。「夏の大会が終わってから、走塁に力を入れてきた」という木無(きなし)真人監督(34)にとって「選球眼があって、走塁センスもいい」という熊谷の存在は、今や攻撃に不可欠なピースとなった。

 足は決して速いほうではない。瞬時の打球判断を可能とする“野球脳”は、元日本ハムで現西武の森本稀哲への憧れが原点だ。幼い頃、レフト線にポテンヒットを放ち、すかさず二塁へ進んだプロの姿を「鮮明に覚えている」という。「視野が広くていいな。あんなふうに、相手の嫌がる選手になりたいな」。それからは、プロ野球や高校野球をテレビで見るたび、走塁に目が向くようになった。

 代表決定戦では、前評判の高い札幌第一とぶつかる。「打てる、打てないは関係なく、相手にプレッシャーをかけたい」。3季通じて初めて全道へ進んだ昨秋に続き、新たな力がチームを2年連続の道大会出場へと導く。【中島宙恵】