<センバツ高校野球:履正社5-7聖望学園>◇28日◇3回戦

 初出場の聖望学園(埼玉)が好調近畿勢の履正社(大阪)を破って、ベスト8一番乗りした。大塚椋司投手(3年)が7回に6連打され2点差に詰め寄られた直後、自らの本塁打で逃げ切った。

 聖望学園を8強に導いたのはエース大塚だった。もっとも投球ではなく、バットで勝負を決めた。7回2死、2球目のスライダーをすくい上げた。打球は風にも乗って、左翼スタンドに飛び込んだ。大塚は「点を取られたんで、打ってやろうと思った。強く打ったら入りました」。

 投げては6回までは被安打5の無失点。自己最速147キロをマーク、完封した初戦(対小松島)にはなかった内角攻めに、フォーク、カーブも投じた。それが7回2死後、突然乱れた。「抑えよう、抑えようとしたら、球が上ずった。焦りました」。6連打され6点のリードは一瞬にして2点差になった。

 試合前、出番を待つ大塚は室内練習場で帽子のひさしにこう書いた。「みんなの思いをこの右腕に

 魂込めて全力投球

 戦え!

 りょうじ」。それがこの回はつるべ打ち。「見る暇なんてなかった。苦しかった」と振り返る。その直後に本塁打を放って、悪い流れを断ち切った。岡本幹成監督(46)は「沈みかけていたチームを救った。うれしかったなあ」。

 試合当初から1発を狙っていた。保育園からコンビを組む原茂走捕手(3年)が打ち明けた。「椋司(りょうじ=大塚)は、初回から(本塁打を)打つと言っていました」。5回にも初球を強振して空振り。そんな狙いが、苦しい展開の7回にピタリはまった。

 この日も「勝負パンツ」ピンクパンサーの図柄が入ったトランクスをはいた。1枚しかなかったが、母成美さん(45)がもう1枚プレゼントしてくれた。連戦でも洗濯を急ぐことはない?

 大塚は「この勢いに乗って行きたい」。エースが見据えるのは03年夏の8強よりも上だ。【米谷輝昭】