郡山(奈良)森本達幸監督(74)は就任47年目の大ベテランだが、今夏を限りに勇退する。関大で2歳下の故村山実投手(元阪神監督)らと一時代を築き、指導者として71年夏に甲子園4強入り。教え子だけでなく、その家族や対戦校の選手も見守ってきた名将は9年ぶりの甲子園を目指し、最後の夏に挑む。
ユニホームに袖を通すと、74歳の背筋が伸びる。夏前から左足がしびれるようになったが、ノックバットを握れば大丈夫だ。「甲子園でもう一度ノックを打ちたいなあ。校歌を歌いたいなあ」と森本監督はいつも言う。半世紀近く、母校一筋に指揮を執ってきた。胸の高鳴りは就任1年目、28歳の夏と変わらない。
選手では甲子園に縁がなかった。1、3年の夏と紀和大会決勝で敗れた。後輩と甲子園に行きたい-。その一心で、監督を引き受けた。郡山は奈良県有数の県立進学校。地元中学で入学希望者がいると聞けば「友だちが2時まで勉強してるなら、3時まで勉強するんやで。待っているから」と励ました。教え子の態度が悪ければ、ときにはその親もしかった。よその子の悪さに気をとめなくなった世間に反発するように、他校の選手にも厳しく温かい目を注いだ。そうやって郡山を、天理、智弁学園に肩を並べる強豪に育ててきた。
今夏限りの退任を決めたのは「あとを継いでくれる監督に、強いチームを残したい」ことが理由の一つ。右腕の上西秀明ら力のある2年がそろい、3年を支える。00年夏以来の甲子園へ。「ここ10年で一番強力」と手応えのあるチームになり、秋の新チームにも期待が持てる。唯一の気がかりだったエース大江健太(3年)の左手首痛も6月25日に軟骨を削る手術を受け、投打ともに万全の状態に近づいた。初戦は14日。47度目の夏に、最後の夢を追いかける。【堀まどか】

