<高校野球岐阜大会>◇29日◇決勝

 県岐阜商が各務原を2-0で下し、3年ぶり27回目となる夏の甲子園出場を決めた。エース右腕の山田智弘投手(3年)が5安打完封。打っても1本塁打を含む、2安打2打点とフル回転だった。

 物静かな右腕が両手を突き上げて雄たけびをあげた。2点リードの9回。2死一塁から代打河合を二ゴロに打ち取ると、エース山田はマウンドに駆け寄るナインの輪に身を預けた。「一生懸命、思いっきりやってきた結果。ここまで来られたのは守ってくれた野手のおかげ。本当にうれしい」。決勝を完封で締めくくった右腕は声を震わせた。

 ひとり舞台だった。0-0で迎えた3回、1死走者なしの場面で真ん中に入った初球を強振。右翼席へ運ぶソロ本塁打で先制点をもたらした。5回には1死三塁から左越えの適時二塁打で貴重な追加点を挙げた。山田は「(本塁打は)思いっきり振った。何とか点につなげたかった」とニンマリ。打者としてもしっかりと仕事を果たした。

 決め球のフォークを封印した。大会直前の練習試合で自打球を右手人さし指に当て、打撲を負った。今春から母校の監督に就任した藤田明宏監督(41)も「大会は無理だと思った。ぶっつけ本番だった」というけがだった。人さし指と中指を大きく広げることが出来ず急きょ“半速球”と名付けたスプリットに近い落ちる球を自ら開発。決勝でも効果的に使い、打者を翻弄(ほんろう)した。

 古豪復活を目指す。県岐阜商は過去26度、夏の甲子園に出場し、優勝1回、準優勝3回の名門。しかし、近年は96年に初戦を突破してからは4回連続で初戦敗退している。山田は「甲子園には堂々と思い切ったプレーがしたい。もちろん優勝を目指したい」ときっぱり。藤田監督は「気力も体力も充実している。甲子園でも頑張ってくれるはず」と右腕に大きな信頼を寄せた。圧倒的な存在感を見せる本格派右腕を軸に県岐阜商が甲子園に乗り込む。【桝井聡】

 ◆県岐阜商

 1904年(明37)創立の県立校。生徒数は1032人(うち女子583人)。野球部は24年創部。部員数85人。甲子園は春26回、夏は27回目の出場。主なOBは中日和田一浩、シドニー五輪女子マラソン金メダルの高橋尚子さん。所在地は岐阜市則武新屋敷1816の6。細江昭夫校長。