マーリンズのイチロー外野手が、メジャー通算3000安打という偉大な記録で大きな注目を集めているが、その一方で今季たびたび話題になるのが、イチローの出場機会の話だ。節目の大記録達成を控えていることもあって今季は開幕の頃から日本メディアだけでなく米メディアもイチローを気に掛けており、米国人記者が「イチロー、出ないの?」「何で出ないの?」と言うのを何度か聞いた。4番目の外野手なのでそれほど出番が多くないのは当然なのだが、思ったよりも少ないという感想を持っているメディア関係者は多いかもしれない。

 イチローが予想を超えるペースで安打を重ねていることも、その思いに拍車をかける。マッティングリー監督の会見のときに「これだけ打っているイチローをコンスタントに起用できないのはタフなのでは?」と質問する米国人記者もいる。先日「イチローの今季の働きに驚いているか?」と聞いた記者もいた。それに対して同監督は「ちょっと驚いている。今季の働きについて、どうしてなのか説明はできないけれどね。打撃だけでなくすべての面で素晴らしいのは驚きだ。この年齢でもいまだに素晴らしい守備力だしね。アメージングだよ」と答えている。

 さらに昨季のイチローの成績を振り返り「昨季の数字から、今季、3割3分以上打つだろうとは予想できなかった。昨季153試合も出場しているのを見て、オーマイガーッ、こりゃクレイジーだと思った」とも話している。現在のメジャーでは若手が重用され、年長の選手にチャンスが与えられることはかつてより少なくなっているため、同監督もそのような感覚だったのだろう。

 しかしイチローは、自らの力でその既成概念を覆しつつある。恐らくマッティングリー監督にとっては、現状でも当初の想定以上にイチローを起用している感覚なのかもしれない。開幕前、あるスポーツ関連サイトでは、イチローの今季を「235打数、58安打、25得点、1本塁打、17打点、7盗塁、打率2割4分8厘、出塁率2割9分3厘、長打率3割7厘、OPS6割、15四球、35三振」と予想していた。現時点で、打席数はこの予想より30~40多くなりそうなペースではある。

【水次祥子】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「書かなかった取材ノート」)