この数年で次々と新ルールが導入され変わりつつあるメジャーリーグだが、つい先日、あるルールを巡って議論が起きた。「引き分け」はありかなしか、というものだ。

 日本のプロ野球では延長12回までに決着がつかなければ引き分けだが、メジャーはご存じのように引き分けがなく、決着がつくまで延々と試合を続ける。今季は開幕から延長に入る試合が多く、そんな中でESPNのジョン・シアンビ記者が「年間162試合も戦うスポーツで12回を超える延長戦を行うのはばかげている。私は引き分けがあってもOKだ」とツイッターで意見を述べた。ニューヨーク・ポスト紙のジョエル・シャーマン記者も「ベースボールには引き分けもあるべき」という記事を掲載。4月13日のマーリンズ対メッツの試合が延長16回まで続き、メッツのテリー・コリンズ監督がレネ・リベラ捕手を投手として投げさせ、先発右腕ザック・ウィーラーに一塁を守らせる準備をしたほど起用する選手がいなくなったことを例に挙げ「長い延長は選手の故障のリスクを高め、試合は一発狙いとなり視聴者を飽きさせる」などと書いている。

 一方で、これらの意見に真っ向から反対する声もある。FOXスポーツの名物リポーターであるケン・ローゼンタール氏は「野球にいいところはたくさんあるが、その中でも一番愛すべきことの一つは、ばかげている部分だ。長い延長戦は、救援投手が何イニングも投げ、先発投手がリリーフや代打や代走をし、野手が投手になるなど何でもあり。ファンはそれを楽しんでいるし、記憶に残る魅力的な試合になることが多い」と引き分けなしのルールを擁護。例えば昨季、12回以上の延長が行われたのは63試合で全体の2・59%にすぎず、選手の故障のリスクに大きな影響を与えるほどではないとも指摘している。

 個人的には、ローゼンタール氏に同意だ。タフさを競うのも、メジャーの面白みだと思う。また、メジャーは多くの試合数をこなしながら選手登録25人というタイトな枠組みの中で戦うリーグであるため、マイナーも含めた層の厚さ、編成力という球団全体の総合力がより試される。長い延長戦で投手を使い尽くしたときなどは、特に層の厚さが如実に現れるため、それぞれの球団の総合力を実感するいい機会。こうしたメジャーならではの楽しみ方は、なくならないでほしい。

【水次祥子】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「書かなかった取材ノート」)