2017年のメジャー公式戦が開幕しました。いまさら言うまでもありませんが、世界各国から強者が集まるメジャーには、いろいろなタイプの選手がいます。特に、投手陣にはワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で侍ジャパンが苦しんだように、日本にはいないような個性派がそろっています。とりわけ「ツーシーム」「シンカー」と呼ばれる動く球は、米国ならではでしょう。ただ、そんなクセ球にも、メジャーの一流打者はしっかりと対応して結果を残しています。

 日本が誇る侍たちが、口々に「あんな球は見たことがない」と苦心した動く球について、メジャー通算20年目の大ベテラン、カルロス・ベルトラン外野手(39=アストロズ)が、貴重なヒントをくれました。ベルトランといえば、通算2617安打、421本塁打(いずれも開幕前の時点)、球宴出場9回の実績を持つ、現役最高のスイッチヒッターです。そんな強打者もデビュー直後はてこずったと言います。そこで工夫したのが、球筋に対する「目付け」でした。

 ベルトラン 「特に左打者の場合、シンカーは外に逃げながら沈んでいく。つまり、ボールの真ん中を見ていると、バットの芯で捉えるのは難しい。だから、僕はボールの内側、しかも下の部分を見るようにしているんだ。そしてバットを出す寸前までボールを見続けることが大事なんだ」。

 日本人投手のフォーシームの場合、ボールのリリースポイントからベース上まできれいな直線で軌道を描くため、タイミングさえ合えば捉えやすいとも言われます。ところが、動く球の場合、タイミングが合ったと感じて振っても、実際にはシンを微妙に外されてしまう、というわけです。

 かつて、ヤンキースへ移籍した直後の松井秀喜氏も動く球に苦労しました。特に「シンカー」に手を出すたびに内野ゴロを繰り返したことで、「ゴロキング」というありがたくないニックネームを付けられた時期もありました。そんな松井氏も、経験と工夫を重ねることで徐々に対応。重心を後ろ(松井氏の場合、左足)に残し、「ギリギリまでボールを引きつける」との感覚を身に付けました。

 そもそも対戦したことのない投手と対戦し、「見たこともない」ような球筋を打ち返すこと自体、高いハードルです。だからといって、WBC用として大会前に打撃スタイルを変えることも、困難でしょう。

 となると、最終的には目を慣らして対応する以外にないのでしょうか。ただ、ベルトランのヒントに説得力があるように、松井氏らメジャー経験者を「講師」として招くのも、ひとつの案でしょう。世界一奪回をより現実に近づけるためにも、米国での事前合宿、メジャーとのオープン戦増など、次回大会までに再考できる事前準備は、きっとあるような気がします。

【四竈衛】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「メジャー徒然日記」)